強さレベル

「おーい、起きてくださーい」


「ん……? なに?」


 あの戦いがあった日の夜、観客スペースに袖女とその友達らしき連中がいたことを知っていた俺は、部屋に袖女の友達がいる可能性を踏まえ、夜遅くの深夜にこっそり窓から入り、袖女以外の人間がいないことを確認した上で就寝した。


 なので、ガチで眠い。早めに外に出ないといけないことはわかっているが、それにしても眠い。


「あ……時間か? 悪い、昨日は遅めに寝たから……」


「別にいいです。それは、今はそれより――」


「悪いもう行くわ」


 本当に眠すぎる。これ以上、体を動かさずにいるとうっかりまた眠ってしまいそうだ。こういう時は朝ご飯を食べてしまうに限る。とりあえず喫茶店に行ってしまおう。


「ちょっ……!」


「悪い、話なら夜に聞く。行くぞブラック」


「ワウン!」


 窓を開けてブラックに声をかけ、肩に乗せる。いつも通りのルーティーン。そのまま喫茶店に向けて行こうとすると、袖女はギリギリで声をかけてきた。


「昨日の戦いは!! ……どれぐらいの力でやりましたか」


 ああ、なんだそんなことか。


(うーん……最後の攻撃だけを見るなら……)


「…… 7割位?」


 それを最後に、俺は窓を飛び出て袖女の部屋を後にした。


「ワウ……?」


「ああすまん。ブラックはその時いなかったんだっけか?」


 あの時は戦っていた敵のレベルが高めだったため、ブラックは連れていかなかったのだ。


「ワウ!」


「すまんすまん……順位が高くなったら、ブラックを施設に入れていいか頼んでみるか」


 一方、袖女は。


「……朝ご飯、作ってあげようと思ったのに」









 ――――









「おはようございますマスター、今日はカツサンドください! もちろんコーヒー付きで!」


「おはようございます。あなたも朝から元気ですね。それと、いつも通り小さなお客様も来てくれているようだ」


「ワン!」


 俺は喫茶店に入り、朝ご飯のカツサンドを注文する。ちなみにブラックも一緒だ。


「小さなお客様にはこれを……」


 マスターはそう言って、ドッグフードの入ったペット用食器をブラックの前に置く。ブラックはよほど腹が減っていたのか、いきなりドッグフードにかぶりついた。


「すいません! わざわざこんな……」


「いいんですよ。いつもお客様の食事を見つめていらしたので……」


 そう、存在感は皆無だったが、凶悪犯たちを捕まえた日以外は、ブラックと一緒にこの喫茶店に入店していたのだ。


 喫茶店に来るときのブラックは異様に静かで、雰囲気を守ってくれていたし、マスターも何も言わなかったため、今まで連れてきていたのだ。


 今までは静かだったが、今はブラックがドッグフードを食べる音が聞こえる。確かに音が増えたが、その分、今までかすかにしか感じることができなかったブラックの存在が強く感じられて、安心感を覚える。


「ふふ……」


 こんな朝も悪くない。そう思った。

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