神奈川本部
神奈川の最重要と拠点、神奈川本部。そこにお呼ばれされた俺は、門番の方に事情を話し、指定の部屋までの廊下を歩いていた。
(素晴らしい……!! 素晴らしいぞ!!)
内装が純白なのは東京本部と同じだが、電灯などの光源が見当たらないのにもかかわらず施設内が明るかったり、飛んでいたハエを、天井からレーザーポインターのようなもので殺したり、所々で技術力の高さを感じる。
そして何よりも素晴らしいポイントが1つ。
(すれ違う人が女、女、女……しかも全員レベルが高っかい!)
初めて神奈川派閥に来た時にも感じたハーレム感。街にいるだけで、鼻に通る匂いがフローラル。男としての幸福を得らられたが、神奈川本部と比べれば、あの時の幸福感など薄めたコーラのように感じる。
(神奈川派閥に男が来たがる理由がよりわかったぜ……ん?)
額に浮かぶ汗を拭きながら、神奈川派閥の真の実力に恐怖していると、廊下の奥から大きな人だかりが迫ってきているのが見えた。
「なんだ……?」
そう言葉をこぼしたのと同時に、先導して歩いてくれていた門番の方が足を止め、急に礼の姿勢をとる。
「ん?」
「すみません。チェス隊の方々の前ですので」
その言葉を聞き、再び人だかりの方を見てみると、その人だかりは真ん中を中心に動いているように思えた。
「その真ん中がチェス隊ってわけか……!!」
「……あら? 男の方ですの?」
――――
ついに遭遇した神奈川最高戦力、袖女以外のチェス隊メンバー。隊服を見ると白のチェスだということがわかった。
「名は?」
その佇まいは凛としていて、その言葉からもお嬢様感を感じられる。おおよそ戦闘用の体とは思えない。俺の予想にはなるが、放たれる威圧感からも、チェス隊の中でも階級は……
「ちょっと! お客様!」
「……ん?」
気がつくと、隣で礼をしていた門番の人が肘で俺の腰をつつきつつ、小声で俺のことを呼んでいた。
「名前! 名前! 王馬様がお聞きになっておられます!」
小さく放たれたその言葉を聞き、王馬様? と言われているチェス隊メンバーの方を振り向くと、こちらを睨みつけている取り巻きに加えて、あからさまに気分を悪くした顔で王馬様がこちらを見ていた。
(……ってか、なんで王馬様なんて呼んでんだ……王馬でいっか)
「あ、どうも、田中と言う者ですー」
頭の中ではこの女のことを王馬と呼ぶことに決め、適当に名前を答える。
「……失礼な態度ですわね。わたくしが白のビショップと知ってのことですの?」
その言葉を聞いて俺は戦慄する。まさかこの女が白のビショップだとは思わなかったからだ。
「……ふん。そうとわかったのなら、速く消えなさい。わたくしの機嫌がこれ以上悪くならないうちに」
その驚愕具合が顔にも表れていたらしい。俺の驚いた顔に少しは機嫌を直したのか、少し得意げな顔をしていた。
(こ、この女が……いや、まてよ?)
その時、俺の中間テスト平均以下の脳が革命を起こす。この状況を利用し、このまま指定の部屋まで行くよりも簡単に上に行ける作戦を思いついたのだ。
その内容、まさにショートカット。それ相応のリスクはあるが、この女を見て、そのリスクは消えた。ノーリスクハイリターン、そんな理想的な作戦を生み出した脳は、作戦開始を体に告げるより先に口を動かした。
「あんたがどいたら? 多分俺の方が強いし」
「……何ですって?」
脳は口を動かしてから、体に作戦開始の命令を下した。
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