模擬戦
「さて……黒のポーン様はどれくらい強いのかな?」
「……言ってくれますね」
ついに始まった黒のポーン強化計画。今から始まる訓練に、俺は心を躍らせていた。
普通の人なら目の前の袖女がどれくらい強くなるのかにワクワクするんだろうと思うが、俺はもっと別の理由でワクワクしていた。
(設備すげー!!)
訓練所はガラスでいくつも仕切られていて、お金をかけている感がすごい。更に細かいところを言うのなら、訓練所に使われているこの土。サラサラ感がすばらしい。まるで砂場のようだ。
(これは練習しやすそうだ……)
神奈川の兵士はこんなに素晴らしい施設で訓練しているというのか。実に羨ましい。
(さて、訓練しますかね)
そんな素晴らしい場所で、訓練とは言え、戦えるのはめちゃめちゃうれしい。
「……こんな時間なら来る人もそうそういないでしょう。早く始めますよ」
今の時刻はまだまだ朝日が昇っていない午前4時。いくら早朝訓練する人がいたとしても、こんなに早い時間から来る人物はいないだろう。
「やるか」
「……よろしくお願いします」
その言葉を皮切りに、袖女の周囲にただならぬ気配が発生。おそらくスキルによるものだろうが、大阪で最後の手合わせをした時と比べると、少し違う。あの時は身体から放出している感じだったが、今回はふつふつと漏れ出ているような感じだ。
(ほう……?)
袖女は馬鹿ではない。俺との模擬戦のために、何かを用意してきたのだろう。それがこれなのか、はたまた……
(楽しみだ!)
「フッ!!」
と、その瞬間に体が後方へ吹っ飛ばされる。ダメージこそ反射のおかげでないに等しいが、上半身を露出させる自体になってしまった。
だが、そこからの追撃がない。そこまでしか攻撃がないのなら、スキルがなくとも体制を整えられる。
(そしてスキルを使えば……)
「こんなこともできる」
体制が崩れた状態で闘力操作と反射を発動。足首を右に動かし、それだけの力で体を超高速で移動させる。
「!? 消えた!」
その速度は袖女が思わず消えたと誤認してしまうほど。
闘力もさらに上昇した。反射も手に入れた。エリアマインドも手に入れた。
「――後ろか!!」
気づいてももう遅い。既に右拳の発射準備は整っている。
黒いジャケットの袖にエリアマインドを発動。拳の発射方向と同じ方向に最高速度で袖を動かす。才華戦で使った石を押し当ててブーストしたのと同じ原理だ。
それに加えて、反射の力に闘力を乗せる。今までの最高火力にエリアマインドの力を加えた俺の新たなる最高火力。
今までの俺を超えた限界を超えた一撃。それは袖女の顔の真横を通過し……
「……やっちゃった」
仕切りのガラスを粉々に破壊した。
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