幕間 一方その頃、東京派閥
伸太が神奈川派閥でエリアマインドを発見したのと同時刻。東京派閥の本部は陰湿な雰囲気に包まれていた。
その原因は当然、1ヵ月前に起こった事件にある。
内務大臣に外務大臣。それに加えてただでさえ少ないマスターランクスキル所有者の死亡。それを知るのは首相と異能大臣に五大老のみ。
しかし、外部にこの情報が漏れるのは時間の問題だった。
「……くそっ、こんな、こんな……」
情けない声を上げる首相。いる場所は会議に使ういつもの部屋だが、どこかおかしい。座っている人物が首相を含めて異能大臣のみ。合計で2人しかいない。
「首相……一旦落ち着いて……」
気持ち悪いほど冷静な異能大臣が、取り乱す首相を落ち着かせようと優しい言葉を投げかける。が、首相はその言葉を聞かず、異能大臣の方をギロリと睨む。
「……なぜあなたはそこまで冷静なんです?」
「取り乱していても何の解決にもならないからです。こんな異常事態だからこそ、はやる気持ちを落ちつかせて、冷静に、じっくりと考えながら物事を動かすべきです」
「……普通じゃない」
「普通では無いから異能大臣を任されたのです」
それを聞いた首相は、諦めたように体の力を抜き、だらんと椅子に腰掛ける。
「……今回の件に関してはあなたに任せます。私はあなたのように冷静ではいられない。少し休む時間をください」
その言葉は病気になったのかと思うほど青白い顔から、嘘ではないとわかる。
それは異能大臣にも伝わったようで、一息つき、了承の言葉を述べた。
「ふぅ……仕方がありませんね。首相もその状態では会議を進める事は無理そうだ。家でゆっくりとお休みください」
「……すいません。では」
首相はそう言うと、トボトボとふらついた足取りでこの部屋から出て行った。これでこの部屋にいるのは異能大臣のみ。
「ふぅー」
先ほどのと同じため息に聞こえるが、これはただのため息ではない。どこか満足感を感じさせるため息だ。
「一時的とは言え……これで、東京派閥の全権限は私が握ったも当然……!」
異能大臣は悪どい笑みを浮かべ、天井を見上げる。
その瞳に写っているのは、ただの天井なのか、それとも――――
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