戻ってすぐのこと その3
「ふっ……よっ……ほ!」
肩にブラックを乗せながら、空気中に舞うホコリを蹴る。
今、俺は空中を移動している。何を隠そう、俺は大阪派閥で準備を済ませた後、すぐに神奈川へ向かって空中を移動していた。
目指すはもちろん神奈川派閥。倒すはもちろん東京派閥。
神奈川に行く。そう決まったときの俺の行動は早かった。
大阪にいた時にまず考えたのは、神奈川にいく前の最低限の準備だ。神奈川に滞在する期間がどれくらいになるかわからない以上、大きなバックに着替えやらなんやらを詰め込んで出発するイメージが強いだろうが、俺はそんなことはしない。神奈川で大きなバッグを背負っていたら、周りから注目を集めること間違いなしだからだ。
神奈川はそもそも男が珍しい。性別が男というだけで注目を集めてしまうのに、大きな荷物を持っていたらさらに多くの人目を集めてしまう。俺の仕事上、誰かに俺の姿を覚えられるのはできるだけ避けたい。
「だから持っていくのはこれだけ……!」
俺の手に握られているのは銀行カード。神奈川に持っていくのはこれのみだ。
知っての通り、この銀行カードには十二支獣を討伐した時の報酬が山のように入っている。衣服も神奈川で買えば違和感はないし、銀行カード1枚だけのため、変に目立つ大きいバッグを担ぐ必要性はない。すべてにおいて完璧だ。やはり金は全てを解決する。
(この銀行カードのみにする方法を思いつくのに2週間以上かかった……が、問題なのは時間じゃない。その方法の完成度だ)
自分で言うのもなんだが、これはかなりの完成度だと自負している。単純ながらに効果は絶大。単純すぎて誰もやらなかった方法だ。
そして俺にはもう一つ、大阪に居た時に考えた作戦がある。
その作戦とは……
「……っと」
頭の中で大阪を出る前の準備の事について考えていたら、あっという間に目的地に着いてしまった。
目的地といっても、神奈川に着いたわけではない。神奈川に行く前にどうしても寄らなければならない場所があった。
それが……
「……久しぶり、店主さん」
「ふふ……待っていましたよ。黒ジャケット」
東京、なんでもパン屋。裏の人間御用達の店だ。
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