キングの称号
キング。それは神奈川派閥にとって特別な意味を持つ。
キングとは絶対にして強大。なれるのは神奈川でたった1人の男のみ。神奈川で最高の男のみに送られる強さの証だ。
キングだけに与えられる"とある特権"もあり、その地位はクイーンと同格。人によってはそれ以上と捉える人もいるほどのもの。そして、それを手に入れると言う事はつまり……
「……神奈川を超えるということ」
「まぁ、そうだな」
普通は無理――なのだが。
「……いいんじゃないですか、やってみても」
「いいのか? 敵だぞ?」
「私にはあなたを止められません。止めたところで無駄でしょ」
「よくわかってるじゃん」
「うるさいです」
目標のために一直線に進む。彼はそういう人だ。それは多分、この世界の中で私が1番知っている。
(私が、1番――――)
「じゃ、そろそろ行くわ」
もう話す事は話し切ったのだろう。窓に手を掛けて外に出ようとする。
「は〜い。いってら――」
別れの言葉を投げようとした瞬間、体が石化したかのようにピタリと止まる。最後まで言葉が出てこない。
その原因は私の中に生まれた1つの考えにあった。2週間後に行われるとある出来事。私にとっては最初から負け試合なそれだが、今はいつもと違う点が1つある。
彼がいれば、彼さえあれば可能なのではないか。暗闇の中から生まれたたった1つの光さす希望。それに縋らない手はなかった。
「あ、あの!!」
(それに――――)
「ん? なんだ」
(都合の良い女扱いされるのは――)
「この部屋を貸す代わりに……条件があります!!」
(なんか嫌だ!!)
――――
面倒くさいことになった。
そう思い、俺はため息を1つ吐く。俺がため息を吐いたのを見て、隣を歩くブラックも口を開けて真似をする。男と犬、それらが並んでため息を吐く姿が変に見えたのか、周りにいる女性達から奇異の視線を感じる。
(……いや、それだけではないか)
俺がここらでは見慣れない男だから見られている。むしろそちらが原因で俺たちを見ている女性の方が多いだろう。知っての通り、神奈川は男が非常に少ない。その過疎っぷりは顔がどんなに不細工でも、男というだけでモテモテになるほどらしい。つまり俺も……
「へへへ……はっ」
せっかく神奈川に来たのだ。頭の中で妄想などしなくとも、自然と
(そのためには、一刻も早く"キング"にならなくては……)
俺のこの言葉を聞いている人物がいるのなら、いきなりなぜキングに俺がなりたがっているのか。それが1番気になっているはずだ。
(そんなの……もちろん……)
東京派閥への復讐のためだ。
もともと俺の旅はあのクソ幼なじみに復讐するために行った事だった。しかし、その最中東京派閥そのものに狙われ、体を入れ替えられた挙句、敵の本拠地にぶち込まれた。
そのおかげでいろいろな経験ができた。骨なんて数えられない位折れたし腕ももげた。両手も使えなくなった。体中切り傷だらけになった。
東京派閥への……憎悪ももらった。
復讐する国ができた。
(それだけで……理由は十分だ)
やられたらやり返す。東京でのうのうと暮らしている奴らに血と肉を見せてやる。
しかし、今の俺1人では勝てない。数が多いくせに質も優秀。今のままでは壊せない。
無論、1人で戦う意地はある。これからも自分の最強を極め抜くつもりだ。
ただ、相手が大人数で来るのだ。それなら……
(こちらが数を使っても文句は言うまい)
簡単だ。かつて俺は袖女を利用した。それが少し大きくなるだけ。国になるだけだ。
そのために俺はキングになる。キングになって神奈川派閥を動かす。そしてその先、俺の最終目標として、神奈川と東京を……
「……戦争させる」
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