楽しい楽しいお祭りの終わり 致命的なミス
「……この写真が一体何なんですか?」
「そのスマホの中にある写真を全て調べてみろ」
俺は藤崎剣斗のスマホを渡す。袖女はスマホを受け取った後、画面をスワイプさせて写真をチェックしていく。
「……どれも普通の男子高校生の写真っぽいですけど」
「じゃあ、その写真の中にさっきの兎女はいたか?」
「え?」
俺の言葉を聞いた袖女は、すぐに兎女の有無を確認するため、もう一度藤崎剣斗のスマホに目を向けた。
「……いませんね」
「そう。そこが相手側が犯した最大のミスなんだ」
俺は今まで、俺にちょっかいをかけてきた謎の人物にしか焦点を当てておらず、その謎の人物に接触する事しか頭になかった。
そのおかげで、スマホの中の写真と言う部分を見ていなかったのだ。
最初に違和感を感じたのは、袖女のあの言葉。袖女が写真についての話をしてくれたおかげで、スマホの中にある写真と言う部分に注目することができたのだ。
しかし、それだけでは犯人を断定することはできない。敵が犯人を誤認させるため、あらかじめ特定の人物の写真を消している可能性があるからだ。
だが、その瞬間、俺はコンビニでの黒髪女のセリフを思い出した。
あの時、俺は黒髪女にいろんな人物の話をされた。その中には初日の時に言い寄ってきた黒髪女も含めた3人の話はなく、その3人の中での金髪の髪をした香里と言う人物と黒髪女のみ。きれいに兎女の話だけ、全く出てこなかった。
もちろん、兎女の名前を知らないだけで、もしかしたら出てきている可能性もあった。だが、他と比べて兎女には明らかな特徴である兎の耳がある。かわいいもの好きな女子からその言葉が出てこないのは明らかにおかしかった。
(……それに、黒髪女の最初のセリフ)
『香里が珍しくノリノリでメイド服を着てたのよ!! 可愛かったわー!!』
このセリフ。よくよく考えてみると、香里と言う人物にしかスポットが当たっていない。あの3人がいつも藤崎剣斗を囲む取り巻きだったのなら、兎女の話が出てもいいはず。
それに、1日目に出会った謎の人物も、俺から逃げる時、ウサギのように高く跳ねて逃げていた。ここからも、兎女が謎の人物なのではないかと言う考えができる。
だが、これらの理由を集めても、兎女が間違いなく謎の人物だと言う確信は持てない。スキルの話は完全に妄想だし、黒髪女の話もそこまで信憑性は無い。兎女の本名が知らず知らずのうちに出ている可能性も0パーセントではないからだ。
しかし、これにもう1人の人物の発言を加えるとあら不思議。疑惑が確信に変わってしまう。
その発言とは……
プルルルルルルル
(……お)
その時、藤崎剣斗のスマホから着信音が鳴り響く。袖女からスマホを奪い取り、黒髪女からの着信だと言うことを確認すると、すぐに電話に出た。
『ちょっと何やってるの!? いつまでたっても避難所に来ないし……』
「なぁ、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
『だからそんな場合じゃなくて――――』
「兎の耳の女の子って、いつごろから学校に居たっけ?」
『はぁ? 何言って……』
「頼む。お前にしか頼めないことなんだ」
『……ああ、もう! 1度しか言わないから聞いててよね!!』
「ああ」
『いい? あの子は――――』
『1ヵ月前に転校してきたのよ』
そして、頭の中に入ってくるハカセの言葉。
『最近教員になった人物が組織の人間の可能性が高い。そいつらを探すんじゃ!!』
その言葉を聞いた瞬間、自分でもわかるほどに口角を大きく歪めた。
あの時、ハカセは1年前の教員の情報と現在の情報を照らし合わせて、1年以内に教員になった4人をリストアップしてくれた。
最近来た人物を狙う。それは正しかった。
しかし、狙うべきは教師側ではなかった。生徒側だったのだ。
兎女が謎の人物で犯人の手先であれば、夜に家で感じたあの謎の視線にも納得がいく。
(そして、兎女のスマホにある電話の履歴を調べれば……)
俺の体を入れ替えた組織が特定できる。
(ついに追い詰めたぞ……犯人……!!)
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