楽しい楽しいお祭りの終わり 久しぶり

「痛つつ……」


「ほら動かない! 今直してあげてるんですから……」


 あの後、騒動に乗じて窓から脱出した俺は、ある人物に応急処置をしてもらっていた。


「こんなになるまで……まったく……! まったく……!」


「……何言ってるんだ? 袖女」


 もちろん、俺を治療してくれる人物など、ハカセを除けば袖女しかいない。何を隠そう、文化祭に来たチェス隊とは、袖女のことだったのだ。


「久しぶりに会ったのに……片腕はないわ顔はフードで隠して見せないわ……ほんとにもう……!」


 片腕がないことを話したら、信じられないほど心配された。なんか半泣きだったし。


(……いや、そんなことどうでもいいか)


「……助けてよかったのか? 監視されてるんだろ?」


「完全に全て見られてるってわけじゃないんですよ……隊服にある付与エンチャントで位置だけを見られてるだけなんです。だから大丈夫ですよ」


「……ふぅん」


 今、袖女に俺を助ける利点はない。まぁ信用しても大丈夫だろう。


『伸太……そやつは……』


「はは……大阪から変な縁が続いてるんだ」


 それから俺は、ハカセに大阪でのことを全て話した……


『うむ……なるほどのう……黒のポーンよ、少し時間をもらえるかな』


「え? ……まあいいですけど……」


 袖女は俺をチラリと一瞥した後、俺とハカセを2人きりにするため、少し離れた。


『オヌシ強くなり過ぎじゃね?』


「……まぁ、強くなった自覚はある」


 ハカセ……スチールアイと2人きりになった後、ハカセから出てきた言葉はそれだった。


『いや十二支獣5体撃破て……大阪派閥壊滅させるんか? あ?』


「いや……そんなつもりはないけども……」


(なんで怒ってるんだ……?)


 何故かキレ気味なハカセを尻目に、俺は文化祭での出来事について考えていた。


(……結局、あの教師が謎の人物かどうかわからなかった……)


 本来の目的は4人目の教師を捕まえること。それが全くできなかった。再度トライしようと思っても、体がもう限界だ。数日で完治できるダメージではない。


「……あ」


「ん?」


 どうしようか考えていたその時、袖女がいる方から、何か着信音のような音が聞こえた。


「あ、すいません。ちょっと先輩からメールが…………全く、旋木先輩は写真をすぐ加工するんだから……」


「なんだ……」


(写真かよ……写真……写真?)


 偶然たまたま耳に入った袖女の独り言。それが何故か、俺の頭に強くこびりついた。


「……写真」


『香里が珍しくメイド服をノリノリで着てたのよ!! 可愛かったわー!』


 そこへ、黒髪女の友達の話が、頭の中に流れ込む。


(そして……スマホ……)


「…………」


 その瞬間、俺の頭に電流が走った。





「そうか……単純なことだったんだ!!」





 わかったぞ……謎の人物を探し出す方法が。

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