楽しい楽しいお祭りの終わり 後先など
息つく暇もなく続く剣撃。最初の頃よりはマシになったものの、片腕の俺では防ぐのがやっとだ。
……さっきまでは。
(もう……)
もう決めたのだ。これから先など考えない。前だけを見る。目の前の壁を砕く。ただそれだけを見据える。
(違うけどな!!!!)
急に腰を下ろし、中腰になり、片方しかない拳を体より後ろにセッティング。アゴへのアッパーの準備を整える。
「えっ……!!」
俺が急に体を晒したのは、さすがに予想外だったらしく、今まで無表情だった桃鈴才華にも驚きの表情が現れた。
桃鈴才華の意表を突くことには成功したが、今の俺には片腕しかなく、自分を守るためのもう片方の腕が存在しない。つまりはノーガード。自分の身を守るためのものが存在しない。
「つっ……ツ!!」
準備している間に剣が体に突き刺さる。肩に、腹に、胸に、顔に、真っ赤な血がコーティングされる。
昨日の大量出血に加えて、ここまでの量の血が出てしまえば、命の危険性も生まれてくるだろう。
(んなもん知るか!!)
もう知らん。命の危険性など知らん。ここが命の燃やし所。己の小さなプライドと信念にかけて、ここで命を使うのだ。
「むぅん!!」
まだ腕に力が入るうちに、まだ体が立っていられるうちに、セッティングした拳を発射する。
意識を一撃で刈り取るパワーがあるのだろうかではない、そもそも当たるのだろうかではない。
(絶対に当てる!!)
――――
(いかん!!)
ワシはスチールアイの奥から、打ち出された拳を見ていた。
(あの程度の拳、桃鈴才華が対応できない訳がない!! まず間違いなく回避されてしまう!!)
伸太にとっては自分の骨身を削った会心の一撃なのだろう。しかし、端から見れば誰でもできるようなアッパー攻撃でしかない。
(じゃが……伸太がそんな無謀なことをするとは思えない……!!)
あやつは今まで、圧倒的に格上の相手にも、起点を効かせて勝利してきた。
そんな男が何の考えもなくがむしゃらに攻撃を仕掛けたとは考えづらい。
そして、その予想は的中した。
なんと伸太はスキルによって、小さな小石を浮かべて肘に押し当て、一気に拳の速度を上げた。
スキルにより小石に生まれたエネルギーを使い、腕を持ち上げ、さらなる速度アップと威力アップを図ったのだ。
その速度は伸太の肩から先がブレて見えるほどだ。
(これなら……!!)
途中で急激に速度が上がったことにより、アッパーが奇襲のような形になり、視認性も落ちた。結果的にさらにヒットする可能性が上がったのである。
だが……
『なっ……!?』
天才は、更にその上を行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます