楽しい楽しいお祭りの終わり 追い詰め続けて

 荒れた職員室で、竜巻のような風が発生する。その風はとどまることを知らず、その竜巻の中心にいる俺と桃鈴才華はその剣と拳で風を作り出す。


 端から見れば、お互いの力は拮抗しており、どちらが勝つかわからない名勝負だと思うだろう。


 しかし、俺の思考は戦いとはかけ離れた方向に進んでいた。


(……舐められている)


 間違いなく舐められている。手加減をされている。でなければ片腕しかない俺が桃鈴才華に対してここまでの時間戦えるわけがない。


 もともと片腕ではまともに戦える時間が少ないと考えた上で、意識を刈り取るための作戦を考えたのだ。技術的には相手の方が格上。そんな敵が俺と戦ってもう5分が経過しようとしている。


 そんな事はありえない。理由はわからないが、手加減してきているのだ。俺が全力で戦ってギリギリ耐えられる位まで。


「おい! お前!! なぜ手加減する!? 答えろ!!」


 戦いの最中、桃鈴才華に対して問いかける。


「…………」


 しかし、桃鈴才華から返答は無い。むしろさらに腕の速度を落とし、戦闘に意識を向けなくてもある程度攻撃をさばけるようになった。


(こいつ……! さらに手加減を……!!)


 もう許さない。完全に怒った俺は、攻撃のスピードを瞬間的に上げ、剣撃の中をくぐり抜け、桃鈴才華の腹に一撃を入れることに成功する。


「ハァ……ハァ……くそっ」


 本来なら泣いて喜んでいい出来事だが、俺の心は全くと言っていいほど晴れ晴れとしない。むしろ煙が立ち込めているかのように、悶々としている。


「答えろ……答えろ!!」


 さっきまで冷静に隙をうかがっていたのが嘘のように、怒鳴り声で桃鈴才華に向かって問いかける。


 桃鈴才華に舐められる。それは俺にとって、特別な意味を持っているから。だから――――





「だって、しょうがないじゃん――――





 弱いんだもん」





 ……屈辱。



 その一言しかでない。



 あの日と同じだ。



 俺の今までをコケにされた。俺の頑張りを見ているだろうに、あの時もそうだ。近くで見ているのに、その努力をがんばりを無下にされる。


(またなのか……まだ届かないのか!?)


 こっちは早く解放されたいのだ。桃鈴才華と言う呪縛から己を解放し、今までできなかった分、さらに天高く、自分の思うように羽ばたきたい。


(なのに……!)


 まだ届かない。まだ超えさせないと言わんばかりに、すました顔で手加減される。あの時の屈辱をまた味わうことになるなんて思いもしなかった。


(ああそうかよ……そっちがその気なら……!!)


 もう後先考えない。


 この体がどうなったとしても、この女に一撃入れてやる。

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