楽しい楽しいお祭りの終わり 全てを投げうってでも その1
今のところは問題ない。大量のテーブルの破片で身動きが取れないはず。
「今のうちに準備を……」
桃鈴才華を相手に、ここまで時間をもらえるチャンスなんて滅多にない。
今ここでしっかりと準備し、倒すすべを作らなくては……
「……飽きた」
桃鈴才華の口から聞こえてきたその言葉を皮切りに、瞬間移動かと見間違えるほどの速度で俺の目の前へやってきた。
目で追えない速度ではないが、ぶれた姿でしか確認できない。この速度をスキル無しでやっていると思うと実力の差に萎えそうになる。
「……っ!」
そこから放たれる剣での一撃。片方しかない手は大事にしたいのでガードのために使えない。回避できる体制ではない。
ここはもらうしかないが……
(せめて頭だけは……!!)
俺はで頭を後ろにスウェーバックで下げ、頭への攻撃を回避する。
しかし、回避できたのはあくまで頭だけだ。足から胸あたりまでは無防備。腹筋に力を入れる程度のことしかできない。
「ふっ!」
桃鈴才華は下から上へ切り上げる形で俺の体を一閃。腰から胸へ大きな切り傷とともに血が溢れ出す。
「いぎっ……がああ!!」
(痛ってぇ……けど!)
内臓を聞き裂かれるような深傷ではない。痛みと出血以外は支障がない程度に済んだ。
ここでの最悪のケースは、顔に傷を受けて血で目が見えなくなることだ。剣などの刃物を武器としている敵に対しては常にこれを気をつけなければならない。
(それに……近づいてくれるのは都合がいい!!)
近距離はこちらとしても射程範囲。元の体ほど接近戦が得意と言うわけではないが、ずっと接近戦をやっていたからかこちらの方が体にしっくりくる。この体はパイパーランクスキルを持つ体。桃鈴才華とでも十二分に戦えるはずだ。
「だあっ!!」
後ろに下げていた頭を一気に起こし、拳で顔面を狙って攻撃する。
たが、そんなミエミエの攻撃を桃鈴才華が貰うわけがない。剣を持っていないもう片方の手で俺の拳をがっちりキャッチする。
(だけどまだ……!!)
俺にはまだ足がある。相手は俺の拳をガードするために片方の手を使い、もう片方の手は剣とともに頭の上にあり、すぐには戻せない。つまり、桃鈴才華には今、防御する術がない。
俺は足を上げ、アゴを狙って攻撃する。これが決まれば顔が上に吹き飛び、桃鈴才華の視界から俺が消え、簡単に次の攻撃が決まるはず。
「甘いよ」
なんと、桃鈴才華はそれに対して剣を手放し、軽くなった片腕を瞬時に自分の胸のあたりに戻し、そこに向かってくる俺の足をフリーになった自分の腕に絡め、足を重心にして俺の体を投げ、床に叩きつけた。
「ぐおぁっ……!!」
(この天才は……!! 技術も俺より上なのか!?)
そう考えている間にも、桃鈴才華はその右拳で俺の顔面を狙ってパンチしてくる。俺はそれを頭をズラすことでギリギリ回避してそのまま起き上がり、体をそのままの勢いに起こして距離をとった。
(長距離も……近距離もだめか)
俺が長年鍛え抜いてきた近距離戦闘。それが通用しなかったことに、俺はショックを受けた。
しかし、それがなんだというのだ。そんなに大きい物体をぶつけようと、簡単に細切れにされる。どちらにしろ、有効打を与えるには接近戦しかない。
(次に近づいてきたタイミング……)
そこが…….勝負だ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます