楽しい楽しいお祭りの終わり 天下無双の一撃
(……そうか、チェス隊が)
チェス隊が近くに来ている。確かに由々しき自体だが、そんな事は目の前の敵を倒さない限り役には立たない。
(目の前のアイツに殺されたら……意味ないしな……へへ)
なんだか意味もなく笑えてくる。まだ自分の脳に他のことを考えられる容量があったとは、人間の体とはわからないものだ。
(昨日のダメージがまだ残っている。体に残されたエネルギーはもともと少ない。ここから勝つには……意識を刈り取るしかない)
強烈な一撃を急所に打ち込み、強い衝撃を脳に加えて意識を破壊する。
意識を刈り取るだけなら、相手の体にダメージを与える過程は必要ない。
一撃だ。一撃だけでいい。天才、桃鈴才華を驚かせるほどの、天下無双の一撃を打ち込む。
それを行うには、その天下無双の一撃を……"急所"にあてる必要がある。
そしてその急所と言えば1つしかない。
(――――アゴにアッパーだ!!)
人間が鍛えられない急所、アゴに天下無双の一撃、アッパーを叩き込む。ボクシングでも稀に見ることができるパンチだ。
それをまともに受けたボクサーはただでは済まない。体が心とは別に悲鳴をあげ、最悪の場合そのまま意識を持っていかれる。
俺が狙うのはその最悪の場合の方。それを叩き込めば一気に現状は好転する。
逆にそれでも立ち上がってきた場合は……
(……いや! そんな事は考えるな!! とにかく打つんだ!!)
――――
(わかっておるさ……)
スチールアイをチェス隊に壊された後、急ピッチで作り上げたスチールアイから頭の中に流れ込んでくる伸太の映像を見て、ワシはとあることを考えていた。
(わかっておるさ! オヌシが何を考えているのかも、何をしようとしているのかも!!)
そして――――
(アゴに……アッパーを打ち込もうとしていることも!!)
今、伸太のコンディションで勝ちを拾うには、絶対的な一撃を急所に打ち込んで意識を刈り取るしかない。
意識を奪いさえすれば、脳と体をつなぐ紐を切断すれば、お互いのコンディション、スタミナ、経験量、全て関係なく勝敗を決することができるからだ。
(急所であるアゴ、そこに力を貯めたアッパーで決め切る……)
理論的には的を得ているように見えるだろう。それが最適解に見えるだろう。
しかし、それには大きな穴が存在する。
(狙えるのか? その……)
(その……疲れきった体で!!)
「はーっ、はーっ、はーっ…………」
伸太の口からは空気を吸ったり吐いたりする音がやけに頻繁に聞こえてくる。疲れて体が酸素を欲しているのだ。
伸太はワシが見た限りでは、相手からの有効打を一度ももらっていない。なのにここまで疲労をあらわにするとは。
(今の伸太は小突いただけでも倒れてしまうじゃろう。それほどまでにこの三日間は伸太にとって重く、そして辛い三日間だった……)
仮にその一撃が決まったとして、残っているのだろうか。
(その体に……桃鈴才華の意識を奪うだけのパワーが……)
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