楽しい楽しいお祭りの終わり 力と羨みと登場と
俺は職員室にあるテーブルを2つ浮かし、2つ浮かしたテーブルを、発射するタイミングを少しずらして発射する。
「桃鈴様!! ここは俺に「下がって」なっ……!?」
桃鈴才華は2つあるうちの先に飛んできたテーブルの方を、手に握られている剣で粉になるまで切り刻む。
だが、そんなことは俺も想定済み。そのために2つのテーブルをタイミングをずらして発射したのだ。
1つ目のテーブルが切り刻まれ、粉状になった瞬間、タイミングをずらして放った2つ目のテーブルが桃鈴才華を襲う。
「こんなの……」
もちろん、この程度の小細工が通用するとは思っていない。桃鈴才華はこの攻撃すらもさばいてくるはずだ。
しかし、この程度の小細工が通用しないなら……
(もっと作り込んだ小細工でなら!!)
俺は残った腕をギュッと握り締めると、それに反応し、2つ目のテーブルが桃鈴才華の手前で爆発する。
個が爆発するとかけらが生まれる。そのかけらは四方八方に分散し、個の状態だった時よりも小さくなる代わりに数を増やす。
そして、エリアマインドで爆発させたテーブルの破片を制御し、四方八方に散らばったテーブルの破片をもう一度、桃鈴才華に向けて発射する。
テーブルの状態の時よりも攻撃範囲が広いオールレンジ攻撃。いくらあの桃鈴才華と言えど、この攻撃を剣一本で捌ききるのは難しいはずだ。
いくらかはダメージをもらってくれるはず。
結果としては、いい感じにダメージはもらってくれた。しかし、もらってくれたダメージは破片の中でも極小のものによるダメージのみ。
大きめの破片や頭などの急所を狙った破片は全て弾かれてしまった。
「……っ!!」
この状態では、接近戦は望ましい戦いではない。攻撃の体を休めては駄目だ。
「ふん!!」
ここが職員室なのは幸いだった。攻撃に使えるテーブルがいくらでもある。
俺が大量にあるテーブルを一気に動かし爆発させ、さらに細かくした後、桃鈴才華に向かってトップスピードで発射する。
高速で発射されるそれはまるでマシンガン。標的にされた物はチリ1つ残らないように思えるが、その標的が悪かった。
(くそっ……)
桃鈴才華は俺のマシンガンのような攻撃に汗1つかくことなく、剣一本で完璧に破片を切り刻まれて行く。どうやらもう破片の攻撃に対応できるようになったらしい。
「ぐう……」
いつもそうだ。こちらが考えに考え抜いた戦略も、才能と言うたった1つのものに簡単に凌駕される。
そんな自分を変えるために、この才能の象徴のような女を打ち負かすために、訓練を重ねてきたのに……
(結局……駄目なのかよ……)
攻撃を続けながらも、感じる力の差に落胆を覚えていると……
『おい! 伸太!!』
「……ハカセか」
ふわふわと不自然に浮かぶ鉄の玉が、どこからともなく俺の横にやってくる。こんなことができるのは、ハカセのスチールアイを覗いて他にない。
「……なんの様だ。こっちは見ての通り因縁の戦いをしているんだが……」
『スチールアイが壊されたぞ!!』
「報告しに来たことがそんなことならどうでもいい。もともといつか壊されるのは目に見えていた」
『違う!! 壊した人物が問題なんじゃ!!』
「……何?」
何が――――
『チェス隊が来ておる!!』
――――
「……ふぅ、他に怪我人はいませんか?」
「ええ、これで全員のはずです……けど、なぜあなたがここに?」
「東京派閥から神奈川派閥に連絡がありましてね……それで私が来たと言うわけです」
「本当にありがとうございます!! 自分たちだけならどれだけ時間がかかったことか……」
「……いえ、前にもこれを見たことがあるので」
(これがあるなら……もしかしたら彼も……)
「私はこのまま校舎に行ってきます。犯人を一刻も早く捕まえたいので」
「え、あちょ――――」
私は警備員の声を聞かず、校舎の方へ飛び立つ。
(……死なないでくださいよ)
大阪で嫌と言うほど見た彼の顔を思い出し、スピードを上げた。
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