楽しい楽しいお祭りの終わり 乱入者

 伸太が職員室に到着した時、ハカセは……


「やったぞ!! これで2つ目だ!!」


(……ちっ)


 2つ目のスチールアイが破壊されてしまい、これで残るスチールアイは2つになった。


(……さすがに慣れ始めたか)


 最初のほうはその得体の知れない登場の仕方と鉄球が浮く不気味さで、何とか時間を稼ぜていた。


 しかし、どんなに新鮮なことでも時間が経てば慣れてしまうのが人間の長所だ。


 だんだん警備員たちも時間が経つにつれおびえていた警備員が減り、いまやスチールアイを怖がるどころか追いかけ回す始末。初見ボーナスはもうなくなってしまった。


 初見ボーナスがなくなってしまえば、スチールアイは未確認飛行物体からちょっと早めに動く鉄球に早変わり。まともな攻撃手段もないため、残り2つの破壊も時間の問題だろう。


(普通ならどうにかして状況を変えなくてはならない……が)


 この戦い、ワシにはワシ本体が戦場に出れないと言う縛りが設けられている。


 もちろん、出ようと思えば出られるのだが、ワシが任されたのは単なる時間稼ぎ。時間稼ぎのためにわざわざ危険を犯してまで戦場に出ようとはとてもではないが思えない。


(伸太には確かに恩はあるが……すまんな)


 心の中で伸太に謝罪する。この老いぼれにも成し遂げなければならないものがある。こちらにも目的はある以上、それを達成せずに捕まるわけにはいかない。


 その代わりと言ってはなんだが、スチールアイを動かすのにかなり意識を持っていっている。

 おかげで体が全く動かない。ワシの体本体は漫画喫茶の個室に入っているからいいものの、もし外でこの状態になってきたら完全に棒立ちになり、不審者扱いされていたことだろう。


「あっ! またスピードが上がったぞ!!」


 警備員の誰かが驚く声が聞こえる。スチールアイの数が少なくなったことにより、速度がアップしたことが原因だ。


 そもそもワシのスチールアイは1つに絞れば120キロほどの速度が出せる。同時に操っているスチールアイが少なければ少ないほど、スチールアイを動かす速度が上がるのだ。



(最低でも後10分は持つ……)



 と、高を括っていると……



「ん?」



 空に何か、何かがこちらに飛んでくる。まだまだ遠いので豆粒のようにしか見えないが、飛行機ではない。何かがこちらに飛んできている。





「何じゃ……?」





 残りのスチールアイがあっさりと砕け散った。









 ――――









「ぐあぁ……」


 後ろからささやかれた後、急に強い衝撃に襲われて職員室のドアを突き破り、そのまま壁に激突。視界が一瞬暗転し……今に至る。


(ミスったな……後ろを全く警戒してなかった)


 受けたダメージは大したものでは無い。問題なのは職員室に入ってしまったことだ。


 ドアを突き破って壁に激突するなんて目立つ行為をしてしまえば、目当ての教師がどこかへ行ってしまう。実際、警戒されてしまったようで、職員室の裏口から避難されてしまった。


「あの2人に重症を負わせたその実力……見せてもらおうじゃないか」


 声が聞こえる。それは聞き覚えのある声で。


 聞いているだけで、はらわたが煮えくりかえる感覚がする。


(忘れもしねぇ……)


 顔を上げると、そこには……



「……さてと」



 護衛騎士団の1人、橋波宗太郎と……



「…………」



 あいつが…………



 桃鈴才華が……いた。

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