楽しい楽しいお祭りの終わり 職員室

 そこから数分とたたない内に、俺は職員室のドアの前へとたどり着いた。


 ここに至るまでに教師の姿はちらほらみたが、その全てが俺の目当ての4人目の教師の姿は見られなかった。おそらくは黒髪女が言っていた捜索組の教師どもだろう。


 黒髪女との通話の後、改めて考え直してみたのだが、本当に4人目の教師が俺はこの体にした組織とつながっているのなら、職員室を捜索され自分が裏切り者だとばれることを想定するはず。俺が4人目の教師なら、ほぼ、いや100パーセント自分の私物を回収しに職員室に来る。


(唯一の例外は体育館に避難するときに、自分の私物を全て持ち帰っていることだが……まぁ、そんなにうまいこといくとは思えないな)


 とにかく、今目の前にある職員室へのドアを開けなくては真実はわからない。


 俺は目の前のドアを開けようとしたその時……


(ッ!? ……なんだ……この感じ……)


 ドアを開けようとした時、急に感じた悪寒。それは気のせいと言うにはあまりにも全身で感じることができ、それは間違いのないものだと認識できた。


(俺の体が拒否しているのか……?)


 この先に、俺の恐れる何かがある。それを体が感じ取っているのだ。


「この体は……まったく……」


 藤崎剣斗の肉体は、筋肉はあっても度胸は無いらしい。これなら俺の体の方がマシだ。もし今、元の俺の体だった場合、この程度の恐怖には全く怯えず、躊躇なくドアを開けていただろう。


(どんなに優秀でも……結局はまだまだ戦場を体験したことがない子供……ってことか)


 そんなことを言っている俺も、少し前までは藤崎剣斗と同じだった。数回戦場に出ただけでここまで変わるのかと自分の心情の変化を実感する。


(さて……開けるか)


 体の震えなどどうということはない。震えていても、動きさえすれば問題ない。



 俺は体を動かし、ドアを少しだけ開け、職員室の中を確認する。



(えーっと……)



 中には職員が何人かおり、書類を片付ける教師や、防災グッズをかき集める教師など、うまいこと役割を分担している。


 教師陣たちはおおざっぱに見てそこまで体格が良くない人が集められているようで、おそらくは教師陣の中でもそこまで強くない人たちで構成されているのだろう。


(強くない人で構成されているのは有難いな……)


 こちらにとってはとんでもないほどのプラスだ。仮説とは言え、俺の記憶に残っている体育教師らしき人物は見当たらない。


 しかし、俺の目的は4人目の教師から俺の体を入れ替えた組織の情報を聞き出すことだ。教師の強さは問題ではない。


(さて……4人目の教師は……)


 俺は改めて、教師全員をチェックし、記憶にある4人目の教師の写真と照らし合わせる。


(いた……!)


 そして発見する。遂に、遂に4人目の教師が見つかった。写真の顔の特徴と完全に一致する。


 これは特大のチャンスだ。みたところ周りに護衛らしき人物もいない。片腕がないとは言え、今の俺なら一瞬で確保することは容易だろう。


(ここで一気に……)


 ドアから一気に飛び出し、4人目の教師を迅速に確保し、そのまま窓に突っ込んで脱出する。


「よしっ……!」


 俺は一気に職員室の中へ。



 駆け込もうとすると……







「そんなに中に入りたいか?」







 後ろから強い力で職員室のドアを打ち破り、職員室の壁へ激突した。


 

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