楽しい楽しいお祭りの終わり 4人目の教師の居場所
俺は必死に懐かしい廊下を走り回る。目指すべきは校舎の奥にある職員室。俺の目的である4人目の教師はおそらくそこにいるはずだ。
「こんなとこ走りたくもないんだが……」
できるならこんな嫌な思い出がある所なんて、走りたくもない。
だが、今は意を決し、走り出す時。体を入れ替えられた真相を知るため、何よりも俺の体を取り戻すため、今は我慢するしかない。目標に到達するためには、一度は苦汁を舐めなくてはいけないのだ。
そのために俺は走り続ける。
しかし、4人目の教師を探すにあたり、1つの懸念点が浮かぶ。
(もし……職員室にも4人目の教師がいなかったら…….)
そう、そこが問題だ。
ハカセのスチールアイも無限に時間を稼げるわけではない。護衛騎士団の残りの2人はおろか、スーパーランク数人でも数分経てば対処されてしまうだろう。
(……対策しておくか)
俺は廊下を走りながら、右手でポケットにあるスマホに手を伸ばし、その液晶に親指を当てて滑らしていく。その目的は黒髪女に電話をかけるためだ。
(出てくれるといいんだが……)
こんな状況なので、もしかしたらスマホからの電話に気づかないかもしれない。
そんな思いを抱きながら、耳から入ってくる煩わしい着信音に耐えた。
それから数十秒、ついにその煩わしい着信音が止まり、黒髪女の声が耳に入った。
『もしもし!? どうしたの!? こんな時に!!』
相変わらずうるさいな――そんな気持ちを抱きつつ、俺は淡々と言葉を続ける。
「ああ、悪い。ニュースを見てな……お前が心配だったんだ」
『……そ、そう……しょうがないわね、全く……』
チョロい。チョロすぎる。普通なら心配になってしまうほどのチョロさだが、今はそのチョロさが有難い。
「お前の身の回りの状況はどうなってる?」
『先生らに誘導されて、今体育館にいるところよ』
(なるほど、当然と言えば当然だな……)
体育館は生徒たちに何かがあったときに避難所として使われがちだ。俺がいた時はそこまで大きな騒動も起きず、この身で体験する事は叶わなかったが、この東一も例に漏れず、体育館を避難所として用意していたようだ。
「先生らは?」
『避難し遅れた生徒がいないか確認しに行った先生達と、体育館で生徒を見張る先生達の2グループに分かれてるみたい。みたところはぐれた生徒はいないっぽいけど……念のためらしいわ』
「…………」
つまり、職員室には既に人はおらず、校舎中に教師達が散らばった状況だと言う事だ。
「……切るぞ」
『え? ちょっと……』
俺は黒髪女の言葉を聞かず、通話を切る。欲しい情報がもらえた以上、これ以上話す必要性はない。
(これ以上は変な世間話とかの関係のない話もされそうだったからな……それに、この程度で関係が悪くなるほどの仲じゃないだろうしな)
「……とりあえず職員室に行くか。もしかしたら、資料を回収しに何人かが来てるかもしれないしな」
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