楽しい楽しいお祭りの終わり 潜入

 空から急に飛来した4つの鉄球。俺はハカセを知っているから目新しさは無いものの、ハカセを知らない警備員からすれば、不気味さを感じる鉄球だろう。


「なんだあの鉄球は!?」


「落ち着け!! まずは冷静にあれを破壊するんだ!!」


 そんな俺の予想通り、警備員たちは飛びまわる鉄球に顔をしかめたり、驚いたり、果ては逃げ出すものまで現れている。


 人間にとって、見たことの無いものは言葉にできないほどの恐怖と不快感を生み出す。そのポイントをついたこの作戦は秀逸だったと改めて感じる。


(そして……警備員たちの注目は全て、あの4つの鉄球に向けられる)


 原因が何もわからない爆発に、空から飛来してきた4つの鉄球。これにより、地面の謎の爆発は4つの鉄球だと警備員たちは錯覚してしまう。


 こんなに簡単なトリックでは、少し頭がいいだけの人間でもすぐに見抜かれてしまう。しかし、人間と言うのは自分の都合の良いように物事を解釈してしまうものだ。


 それに加え、目の前で巻き起こっている体験したことのない現象。


 パニックになった人間ほど単純かつ無能な生物は存在しない。


 故にこんなありきたりなトリックにも引っかかってしまう。ひっかかってしまうのは必然であり、絶対だった。


(今の内に……)


 あの時捕まえ損なった4人めの教師を捕まえるため、俺は校舎の中に入っていった。









 ――――









(さてと……)


 ワシは伸太に言われたお願いを果たすため、スチールアイを動かし、文化祭を襲撃していた。


(まぁ、肝心のワシは家でくつろぐだけなんじゃがな……)


 そう、伸太のお願いはワシ自体が動くものではなかった。伸太のお願いは『合図をした時、スチールアイで空から襲撃して欲しい』と言う何の用途に使うのかわからないお願い。


 戦闘の補助として使うのかとも思ったが、既に伸太はワシのスチールアイで手助けできるレベルを超越した戦いを見せるようになった。


 騎道兄弟を単独で連続撃破した時は脳が震えた。ここまで急激に成長する奴がいるのかと、これが本当にあのいじめられていた田中伸太なのかと。


 そんな次元の違うレベルの戦いに鉄の玉一つ参戦したところで、一瞬で破壊されるのがオチ。役に立たないどころか、逆に迷惑をかけてしまう可能性もある。



 ゆえにどこでどう使うのか、ワシはそれが気になっていたのだが……



(……なるほどのう。合点がいった)



 地面に不自然な連続爆発を起こし、そのタイミングと同時にスチールアイを飛来させ、警備員たちに1月する時間を与えず、ラッシュをしかける。


(これによって警備員たちの気を動転させ、スチールアイに気をとられている隙に……校舎の中に潜入すると言うわけか)


 なるほど、これならばスチールアイ程度でも十分に活用できる。スチールアイを適切に使ったと言うわけだ。


(これを伸太一人で…………)


 戦闘面でも戦略面でも、目まぐるしいほどの成長を遂げた伸太に対して、なんだか感慨深い気持ちになる。自分の子供の成長を実感するような、そんな気持ち。


(自分の子供……か)





「エリア……」





 時は流れていく。





 目まぐるしい程に。

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