楽しい楽しいお祭りの終わり 外側からの攻め
黒髪女と別れた俺は午後からの行動のため、ハカセに電話で連絡を入れた後、文化祭の近くでウロチョロしていた。
「さてと……」
文化祭に行かないのかと思う人もいるかもしれないが、黒ジャケットの姿は騎道兄弟と警備員に視認されてしまっている。
それを裏付けるかのように、最終日の文化祭の警備は2日目に比べて明らかに厳重になっていた。
(警備員が単純に2倍近くの人数になってるな……この感じだと、兵士も何人か呼ばれていてもおかしくない……)
黒ジャケットがどこまで東京派閥に危険人物と考えられているかはわからないが、この強化された警備体制を正面から突破するのは現実的ではない。
コンディションが良いならできなくはないが、この片腕がない状況だと無理に等しい。
(これをどう崩すかだが……)
外側からは100%崩せない。
「だが……」
今この時。この状況でこそやれる方法がある。
(外がダメなら内からだ!!)
俺は残された方の腕の人差し指をクイッと上に上げると……
「キャアァァァァ!!!!」
文化祭中に急に響き渡る女の人の叫び声。
「うわああああぁぁ!!!!」
「たすけぇぁぃあぁぁぁぁ!!」
その女の人だけではない。文化祭の至るところから、奇声、悲鳴、助けを求める声、至るところから聞こえてくる。その叫び声に幸せの感情は感じられず、全てが悲痛に聞こえ、全てが恐怖に怯えていた。
そして、その犯人とは……
「……ふん」
もちのろん。この俺、黒ジャケットだ。
俺のスキルは反射だ。反射だった。
しかし、この肉体になってからは反射が消え去り、代わりにエリアマインドと言う力をつけた。
半径10メートルの物を自由自在に動かすこの力。この力があれば、反射の時には叶わなかったとある動きが可能だ。
それが、それこそがこの爆発。
(地面の中にある岩や砂利を掘り起こし、擬似的な爆発を起こした後、そのどさくさに紛れて潜入する!!)
最終日のミッションである犯人探し。数ある犯人候補の中で、俺の心の中で1番犯人の線が濃い4人目の教師を見つけるには、文化祭への潜入が必須だった。
潜入する方法自体は簡単に思いついた。エリアマインドを使って、こちらの姿が見えないようにひと騒ぎ起こせば、簡単に潜入できる。もちろん警備員たちも対応するだろうが、まず民間人たちの避難を最優先とするはず。ここは民間人がいい感じに足を引っ張ってくれた。
そしてその通りに、爆発したときの砂埃によって姿を隠し、警備員に姿を見せることなく文化祭内に入ることができた。
だが、そのまま犯人の姿が見えないと、警備員たちに内部に潜入されたと思われてしまう。
(だが、それも対策済みだ……!!)
俺は舌をペロリと外に出し、合図を送ると……
『やれやれ……本当に老人使いが荒いのう……』
空から4個の鉄球が飛来した。
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