楽しい楽しいお祭りの続き 偽黒ジャケットの正体
俺は今、偽黒ジャケットを追って空中を飛んでいる。
ことの発端は、偽黒ジャケットについて来いと言われたことだ。
もともと腕を吹っ飛ばされ、出血多量で死にかけだったため、もし逃げれると言うのなら、この提案は渡りに船だった。
だが、もし偽黒ジャケットが敵だった場合、今俺が向かっている場所が敵の本拠地の可能性がある。弱っている俺を仲間のところに呼び、フルボッコにしようとしているのならば、俺に未来はない。
しかし、この提案に乗らなければ、どちらにしろ未来はないのは事実。どっちにしろこの体ではやれることも少ないだろう。
もはや俺には、偽黒ジャケットの提案にのる以外に方法はなかった。
正直、騎道兄弟を殺せなかったことは少し……いや、かなり悔しかったが……自分の命に比べたら安いものだ。
奴らを全員殺し、自分は生存する。奴らがいない世界を幸せに暮らす。それに意味があり、復讐と言うものの存在意義がある。復讐が終わったから無気力になるみたいな、そんなちっぽけなものではない。復讐が終わった後も、俺は新たなスタートを切るのだ。
(こんなところで力尽きるわけにはいかない……!!)
そうやって空中を飛んでいると、急に前にいた偽黒ジャケットが急に地面に落下する。どうやら目的地に着いたようだ。
ここまできて、偽黒ジャケットと同じ目的地以外に着地する選択肢は無い。
(さて……鬼が出るか蛇が出るか……)
俺は覚悟を決め偽黒ジャケットが降りた場所に向かった。
――――
俺が降りた場所、そこは……
「……裏路地?」
「そ、裏路地。とりあえず誰もいない場所に行きたいでしょ?」
何の変哲もない裏路地。人目も少なく、人影もほとんどない。身を隠すにはうってつけの場所だった。
「とりあえず止血を……って、なんで血出てないの?」
偽黒ジャケットにそう言われ、俺の意識は裏路地から自分の体に向けられる。
そういえば、偽黒ジャケットについていくために飛び立ったあたりから、体の具合がほとんど変わっていないような気がする。もちろん貧血気味なのだが……それ以上に体の状態が悪くならない。そういえば、ハカセによると、袖女と戦った後も気絶したが、それ以上の危険な状態にはならなかったらしい。
(他の人より治りが早いんかな……)
俺は適当にそう結論づけ、俺は偽黒ジャケットに返答する。
「人より治りが早いんだ……そんなことは気にするな」
「……すごいね」
「どうも」
そんなたわいもない会話をするが、俺が聞きたいのはそんな世間話ではない。
「悪い、率直に聞きたいんだが……」
「お前は敵なのか?」
そこ。そこが重要だ。
こんな人気のないところまで連れて行ってくれた偽黒ジャケットだが、まだ味方と断定されたわけではない。
人気のない場所に連れて行ってくれただけで、この場で何の証拠も残さず、俺を殺すためと言う可能性もあり得る。
「あ〜えっと……」
俺のその疑問に対して、偽黒ジャケットは返答に渋っている様子だった。
どう返答しようか迷っているのか、それとも……
「すぅーはぁー……よし」
(……おっ)
偽黒ジャケットは意を決したように深呼吸すると、俺の近くに近づこうと、俺に向かって歩みを進めてくる。
無論、偽黒ジャケットに対しての警戒は崩さない。しっかりと偽黒ジャケットからでは見えないところで、コンクリートや砂利を浮かせて待機させる。
(さぁ、来るならいつでも来い……!!)
そして、偽黒ジャケットは俺の目の前で立ち止まり……
「ファンです!! 握手してください!!」
俺の思考は停止した。
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