楽しい楽しいお祭りの続き もう1人の黒ジャケット
突風を巻き起こし、目の前に現れたもう1人の黒ジャケット。
黒ジャケットご本人である俺からすれば、この黒ジャケットが偽物だということがわかるのだが……
「な……なぜ黒ジャケットが2人いるんだ!?」
「まて! もしかしたら黒ジャケットはもともと2人組だったのかも……」
(やっぱり……相当動揺されてるな)
警備員からすれば、学生とは言えハイパー2人を立て続けに倒した敵がもう1人現れたようなものだ。警備員はもちろん、そこら辺の兵士でも太刀打ちできないような驚異。俺でも絶望するような展開なのに、一般の警備員がそんなものを味わえば、その心情は文字では表せないほどの絶望感に満ち溢れているだろう。
(しかし、肝心なのは……この偽黒ジャケットが味方なのかどうかだ)
そう、1番の問題はそこだ。
この黒ジャケットが敵なのか味方なのか。そこを慎重に見極める必要がある。
(俺を殺すのが目的なら、地面に着地した瞬間に俺を殺すはず……もしこの偽黒ジャケットがハイパー並の実力だった場合、この状態の俺なら楽に殺せるだろうしな)
今、この場所は目の前にいる偽黒ジャケットの行動次第で、大きく揺れ動くことになるだろう。
「…………」
「……ッ! う、動くぞ!! 発砲用意!!」
偽黒ジャケットは周りを大きく見渡し、俺を見つけると、狙いを定めたかのように俺に向かって大股で歩いてくる。
歩く偽黒ジャケットに対して、警備員のリーダーらしき人物は周りに発砲の用意をさせる。かなり興奮しているようだ。
(まずいな……)
リーダーらしき人物の様子から見ても、いつ発砲されてもおかしくない状況だ。
(とりあえず足は動くから……周囲の地面を切り取ってッ……!?)
この状況を打開する案を考えていて、偽黒ジャケットが近づいていたことを忘れていた。
もう目の前に偽黒ジャケットは近づいてきている。
(しまっ……)
俺は急激に体を後ろに下げ、偽黒ジャケットから距離を取ろうとした時、不思議な声が耳に入る。
「大丈夫だよ。助けるから」
耳に、そんな声が入り込み――
「撃て!!」
警備員たちから、銃弾の雨が降り注いだ。
……が。
「……へ?」
警備員たちの中から、素頓狂な声が出てくる。
それも当然だ。何せ周りの銃弾が……
空中でピタリと止まっているのだから。
「……!!」
これには俺もかなり驚いた。
まるで映画のワンシーン。アニメでよくあるスローモーションのシーンのよう。
アニメと違うのは、その銃弾が完全に止まっていることだ。
おそらく、というかほぼ間違いなく偽黒ジャケットのスキルなのだろうが、いくらなんでも凄過ぎる。これは間違いなくハイパーランクスキルだろう。
「……っ! うろたえるな!! すぐにもう一度、発砲用意を――」
警備員のリーダーらしき人物が、あぜんとしている周りにもう一度、発砲用意を呼びかけるが……
「銃弾の……」
偽黒ジャケットは人差し指を上に上げ――
「忘れ物だよ……」
銃弾を警備員たちに返した。
「なっ……た、退避、退避ー!」
警備員たちは何とかその銃弾を避けようとするが、その思い叶わず、次々と警備員たちの体に穴を開けていく。
その攻撃を跳ね返す力は、俺の元々のスキルである反射を思わせた。
周りが阿鼻叫喚している中、偽黒ジャケットは冷静に俺に向かって話しかける。
「立てる?」
「あ、ああ……なんとか……」
「そっか。なら今から私についてきて、安全なところに連れて行ってあげるから」
偽黒ジャケットはそれだけ言うと、地面を蹴って高くジャンプし飛び上がった。
(ど、どうする……?)
正直、偽黒ジャケットは信用ならない。安全な場所と言われてついていったら、実はもっと危険な場所でしたなんて可能性もある。
(だが……)
だからといって、いつ残りの3人が来るかわからないこの状況を打破するには、もうついていくしか手がない。
(一か八か……)
結局、偽黒ジャケットについていくことを決めた俺は、偽黒ジャケットが飛んだ方向に向かって飛び上がった。
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