楽しい楽しいお祭りの続き 断捨離
「……あぁ?」
俺の耳に入った言葉。できることならば俺の聞き間違いであってほしい言葉。
しかし、だからといって俺に何かができると言うわけではない。相手の言葉を操作できるわけではないし、あの口を縫って塞げるわけでもない。
「どうなんだよ?」
「……話すわけがないだろう」
そう、話すわけがない。
なぜ俺が藤崎剣斗だと感づかれたのかはわからないが、藤崎剣斗だと感づかれた以上、騎道優斗もこのままにしておくのは危険。ここで始末しなければ、このことを上に報告され、藤崎剣斗である俺が容疑者として疑われてしまう。
何度も言うが、それをされてしまえば、少なくとも3日目は活動を制限されてしまう。
いや……最悪の場合。
(ありえる…… 3日目の文化祭の出禁……!!)
この文化祭と言う人が集まるタイミング。俺を狙う奴らにとって、絶好のチャンスであるこの祭りは、俺にとっても、俺を狙う奴らをあぶり出す絶好の機会であり、これを逃せばほぼもう俺に機会はないと言っていいだろう。
(つまり……今俺が、安全に3日目を迎えるには……)
この場で残りの3人が到着する前に、死にかけの騎道雄馬と無傷の騎道優斗を2人まとめて殺さなければならない。
この……片腕がない状態で。
(……とにもかくにも、作戦だ……作戦がないとこの2人抜きは成立しない!)
とりあえず力押しは通用しない。ティルヴィングの性質上、どんな瓦礫をぶつけようと簡単に切り裂かれてしまう。
(というか、騎道優斗がその気になれば、俺を殺すことなんて簡単に……)
「……まぁ、そりゃそうか」
俺の心情などつゆ知らず、騎道優斗はティルヴィングを前に突き出し……
「なら……捕まえてそのフードを剥ぎ取ってやる」
瞬間、俺の目の前から騎道優斗は消えた。
「――ッ!!」
「やっぱこの程度は抑えるか!!」
俺の後ろに回り込んでいた騎道優斗だったが、俺の感によるブロックにより、攻撃をガードすることに成功した。
「「――!!」」
それを境に、俺たちの戦いは再び激化。お互いに後ろに跳ねて、空中でピタリと止まる。
「落ちろ!!」
「お前がな!!」
騎道優斗は単純に突っ込み、俺は瓦礫を発射しながら突っ込む。お互いに近距離戦を望んでいるようだった。
俺がなぜわざわざ相手のテリトリーに入ってまで、近距離戦を仕掛けるのか。それは単純に、騎道優斗と騎道雄馬のスキルの違いにある。
騎道雄馬の村雨なら、瓦礫をぶつけるだけでもダメージを与えることができる。
しかし、騎道優斗のティルヴィングはどんなに硬いものをぶつけようと、いともたやすく切り裂いてしまう。いくら瓦礫を投げつけようと、直接的なダメージにはつながらないのだ。
なら行くしかない。自分の体を危険に投じ、己が拳でダメージを与えるしかない。
(自分だけ安全地帯にいたいなんて考えは捨てる!!)
後ろから瓦礫をぶつけるだけなんて意味のないことばかりしていたら、時間が過ぎるだけだ。その間に他の3人が来たら、本当に詰みになってしまう。それだけは回避しなくては。
「――ッ! ラァ!!」
「ダアアッ!!!!」
ここからは――――
体力勝負だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます