楽しい楽しいお祭りの続き 対策
空中に浮かんでいる黒いジャケット男。
それは周りに多量の瓦礫やら何やらを浮遊させ、その場に浮いていた。
正確には浮かんだ瓦礫の上に立っているのだが……まぁ、浮かんでいるのと変わらないだろう。
そして問題なのは瓦礫の上に立っている人物だ。
「まさか……黒ジャケット……!?」
黒ジャケットがここにいるのはありえない。なぜなら神奈川派閥での事件の後、東京へ逃亡したのち、異能大臣の用意した兵士たちの待ち伏せにあったはずだからだ。
異能大臣にその後を聞いてもトップシークレットだからと教えてくれなかったが、まさか捕まえれなかったのか。
(まさか……)
俺はその事実を確認するため、黒ジャケットに聞こえるように大声で問いかける。
「おい!! お前は黒ジャケットなのか!?」
「…………それに答える必要はない」
当然と言えば当然の答え。自分にとって都合の悪いことを相手に問いかけられて、素直に答える必要性はない。答えるやつは相当お人好しだ。
そして、目の前の敵は雰囲気でわかる。
答えるタイプではないというのを物語っている。
ならば戦う。周りに被害が及ばないように、最小限に抑え込みながら。
(短期決戦だ)
――――
(……何ヶ月ぶりだ? この顔を見るのも)
俺は空中に浮遊……もとい、空中に浮かんだ瓦礫に乗っかった状態で地上にいる騎道雄馬を見下ろしていた。
(夢にも思わなかった……俺が騎道雄馬を見下ろす日が来るなんて……)
これも全て、あの日あの時、俺が復讐を決意したからこそ起きた奇跡なのだ。
「おい!! お前は本当に黒ジャケットなのか!?」
(……あ?)
放たれたその言葉に、俺は疑問を覚える。
(なんだあいつ? 老眼か?)
俺は今、黒のジャケットに身を包み、顔もフードで隠している。黒ジャケットに見えない理由など何一つないはずだ。
そして、目の前の人物が敵とわかった以上、排除するのが兵士と言うもの。戦わない理由はないはずだ。
(これで何かヒントを与えて、正体に感づかれても困る。ここはノーヒントが安全だな)
「…………それに答える必要はない」
これが1番正解だろう。何もヒントを与えず、何の利益も与えさせない。
さて、戦闘の話に戻ろう。
高さ的には俺はすでに圧倒的勝利を収めているが、お互いの単純な実力を比べ合うと、相手の方が圧倒的に格上だ。
理由は2つで、1つはあっちは使い慣れた体とスキルがあるのに対し、こちらは不慣れな体にまだまだ開拓できていないスキル。その時点でまず不利。
2つ目の理由は相性。
こちらのスキルは物体の硬さが変わらない以上、いくら物体を速く飛ばそうが何をしようが全部ぶった切られてしまう。
どんな攻撃も当たらなければ意味がない。どんな物体も斬られてしまっては意味がない。
以上の理由から、今の俺と騎道雄馬は尋常じゃないほどこちらが不利。
しかし、俺が何の勝ち目もないまま敵と戦うわけがない。しっかりとこちらが有利な部分も握っている。
あいつは俺のスキルを知らないが、俺はあいつのスキルを知っている。
"村雨"は遠距離系の攻撃がほとんどない。せいぜい水を飛ばすので精一杯だ。
対してこちらは遠距離攻撃が可能。さらに対策として、効果的そうなガラクタやらなんやらを大量に準備している。
さらに、現時点で俺と騎道雄馬の距離は大きく離れている。
つまり騎道雄馬は、俺と戦う前に距離を詰めなくてはならないと言う事だ。
遠距離系のスキルに対して、近距離系のスキルで距離を詰めるしんどさは俺が1番よく知っている。
(悪いが、こちらはすぐに終わらせる気はない)
そして当然、後ろから迫ってきている"もの"にも気づいている。
俺は騎道雄馬から目を離さず、近くの瓦礫で後ろから迫ってきている"もの"をガードする。
「……チッ」
「不意打ちは効かんぞ?」
おそらくはこれを直撃させるため、わざと俺に話しかけて時間を稼ごうとしたのだろう。騎道雄馬から目を離さなかったので、近づいてきたものの正体はわからなかったが、大体予想はできる。
(おそらく……いや、考えるだけ無駄か)
俺の今の頭の中は、たった1つの思いでいっぱいで他に何も考えていられない。思わず体が動き、あの時殴られた方の頬をゆっくりと撫でる。
(たっぷりいたぶってから……地獄を見せてやる)
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