楽しい楽しいお祭りの続き 戦いの1
失敗した。
やはり人生、そううまくはいかない。後ろからこっそり飛ばした水滴弾を簡単に防御された。
これで被害なしでの問題の解決は不可能。
(……いや、そんなことに期待していては騎士の名折れ)
騎士ならば、正々堂々と、戦って勝たなくては。
「……いくぞ」
俺は空を当たり前のように飛び、村雨を握って斬りかかる。前に行ったが、魔剣捻出の特性として、スキル保持者は空を飛ぶことができるのだ。
「ハアアッ!!」
「それが当たるかよ」
しかし、真正面からまっすぐに進む相手に対して、対応しない馬鹿はいない。こちらに向かって瓦礫を飛ばしてくる。
「むん!!」
確かに、真正面から向かってくる相手に対して、対応しない馬鹿はいない。
だが、それと同じように、前から向かってくる瓦礫に対処しない馬鹿もいない。
俺はすかさず構えていた村雨で、瓦礫を切り裂く。
…………が。
「やられた……!!」
確かに瓦礫は切り裂くことができた。
しかし瓦礫以外は切るのに時間がかかった。瓦礫の中に紛れていた"鉄のパイプ"が引っかかってしまい、切るのに時間がかかってしまったのだ。
そこにすかさず、近づいてきた黒ジャケットの蹴りが俺の腹に炸裂する。
俺の体はそのパワーに押されそのまま落下、地面に背中から体を打ち付けてしまった。
「……くそっ」
打ちつけられた背中の痛みを感じながら、俺は思考をめぐらせる。
鉄のパイプが引っかかり、切るのに時間かかってしまったとは言ったが、コンマ1秒位の差だ。ぶっちゃけそんなの見切る事ができなければ隙とは言えない。
だが、黒ジャケットはそれを完璧に見切り、その隙を突いて蹴りをかましてきた。
(神奈川派閥から逃げきった実力は並ではない……か)
さて、どうやって攻略しようか。黒ジャケットは遥か上空、周りには大量の瓦礫が浮遊しており、黒ジャケット本体の強さもかなりのもの。そしてそれがおまけに思えるほどの圧倒的な観察眼。
(黒ジャケットはその観察眼が強みか……ならば)
目で追えないほどの速度で切り伏せるのみ。
――――
(ふぅ……危ない危ない……が)
俺は急に近づいてきた騎道雄馬に驚きつつも、冷静な対処を行うことができた自分に成長を感じていた。
(確実に強くなってきている……もう手が届くんだ……!!)
どんなに厳しい訓練も生ぬるく見えてしまうほどの戦いの数々。時には体中の骨が折れた時もあった。時には肉がえぐれた時もあった。
しかし、そんな戦いの果てに、このクソストーカー野郎をボコボコにできるチャンスが与えられたのだ。あの灰色の時間にも意味があったと思うと感慨深くなる。
そんな注目の的である騎道雄馬は地面に立ったまま静止していた。
「どうしたぁ? 立ち止まって……もしかしてもう手詰まりか?」
「……そんなわけないだろう? 貴様を打ち倒すための準備をしているんだ」
(倒すための準備だぁ……?)
俺の記憶が正しければ、あいつの村雨にあれ以上の速度を出す手段はない。他に魔剣捻出のスキルを持っている人間がいれば別だが、魔剣捻出の浮遊は出力上限以上の速度は出ない。仕組みはわからないが、そういうものなのだ。
(まさか新たな技を入手したとでも言うのか?)
騎道雄馬は東京派閥でも有数の才能の持ち主。俺が東京派閥を出てからもう数ヶ月は経っている。
いくら俺が雄馬たちのスキル内容を知っているとは言え、もう数ヶ月前の情報だ。既に古い情報と言っていいだろう。
(もし、奴が俺に対抗する技を身に付けていた場合……)
今の状況が一転、不利になる可能性がある。
(なら……)
「今のうちに潰す!」
俺は大きめの瓦礫を粉々に砕き、粒状にして騎道雄馬に飛ばす。
本当ならば、大きな瓦礫をそのまま飛ばして一気に殺すのが正解なのだが、俺はあくまでいたぶってから殺すのが目標。それができなくては復讐とは言えない。
ハカセからの任務をこなした上で、自分の復讐も遂行する。
(それが俺にとっての"勝利"……それ以外の"勝ち"は意味がない!!)
故に大きな瓦礫を粒状に砕き、相手の部位を破壊する。新たな技を習得していたとしても、さすがに身動きが取れなくなってしまえば意味はないだろう。
(久々の大一番だ……)
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