楽しい楽しいお祭りの続き 新たなる魔剣

「おおおお!! あいつも結構やるなぁ!」


 どうやら優斗だけはテレビ画面をじっと見つめていたようで、目の前で起こった事象にリアクションをとっていた。


「おい優斗、一体何が起きた?」


「ん? おいおい雄馬、ちゃんとテレビ画面見てなかったのか? 勘弁してくれよ〜?」


「ああ……」


 体育祭に桃鈴様と同じレベルのスキル保持者がいるとは思えない。なのにも関わらず、桃鈴様の出ていた綱引きと同じように一瞬で終わるとなると……少し興味が湧く。


「ええ〜? どうしよっかなー?」


 優斗との仲は良好とは言えないので、優斗の性格的にこの展開になるのは予想できた。


 ……が、対処はいたって簡単だ。


「すまない。頼むから教えてくれ」


 ちょっとこちらが下手に出てやれば、簡単に調子に乗って教えてくれる。


「しょうがねぇな!! そんなに頼まれたら断れないじゃん!!」


(……単純なやつ)


 ここまで単純だと兄として心配になってくる。俺自身家では母が何かとかまってきて、イライラしていた時があったが、その時の気持ちがわかった気がする。


「それがよ……藤崎剣斗ってやつのスキルで竹が全部浮いて、そのままゴールに行っちまったんだ!!」


「……藤崎剣斗?」


「ああ、確か雄馬はそこそこ面識があっただろ?」


「……ああ、確かに、剣斗なら一瞬で終わらせることも可能か……」


 確かに藤崎剣斗のエリアマインドなら、すべての竹を宙に浮かべ、自分チームの陣地に押し込むことが可能だろう。


 しかし、藤崎剣斗をある程度知っている俺だからこそ、ある1つの疑問が浮かんだ。


(……そこまで目立つような行動をするやつだったか?)


 俺を知っている藤崎剣斗は、自分の力を誇示するような行動を滅多に取らない。

 何か内申点が追加されるわけでもない体育祭ならなおのこと、勝ち負けにこだわりはしないだろう。


(関わりがあったといっても、養成高校の対抗戦で少し話す程度の関係だが……それでもこんな行動をしないと言うのはわかる)


 剣斗と親密な関係の人間なら、より違和感を感じるだろう。


(…………確認してみるか)


 俺はテレビ画面に藤崎剣斗が映るタイミングで、スキルを発動する。



(…………"魔剣捻出")



 俺はそう念じると、自身の腰に日本刀が帯刀される。


 優斗とスキルは同じだが、優斗は全く別の魔剣。



 (行くぞ…………"村雨")





スキル名 魔剣捻出


保持者 騎道雄馬


スキルランク hyperハイパー


スキル内容

 手のひらに力を込め、魔剣を捻出する。魔剣は使い手によって種類が異なり、それぞれ固有の力を持つ。


魔剣 村雨

 刀身から常に水気を発し、抜けば刀の付け根から露つゆを発生させ、振れば水がほとばしる。





 これが俺の魔剣……"村雨"だ。


 優斗が全てを切り裂く魔剣ならば、俺の魔剣は水ほとばしる魔剣。いや、刀と言ったほうがいいだろう。


 簡単に言えば水を操る力を持った刀だ。能力以外で他の魔剣と違う部分と言えば、腰に鞘ごと出現することだ。


(……今はそれが問題ではないが)


 俺は早速、村雨の刀身にある水を操り、自分の目の外側に、水で度の強めのメガネを作る。


(数年前のテレビの解像度ならこんなことをやっても意味なかっただろうが……今のテレビの解像度なら意味がある)


 これでテレビ越しから藤崎剣斗を確認し、外部から何かあったかを確認しようと言うわけだ。

 別にこれで何もなければ何もないで別にいいし、俺の興味本位なのでこれが無駄になっても良い。


(さてさて、どうなるか……)


 テレビ画面の藤崎剣斗をその水のメガネ越しに見ると……


(…………ん?)


 藤崎剣斗の髪の毛に、何かキラリと光るものが1つ。藤崎剣斗は黒髪のため、髪の毛が反射していると言うわけでもない。


(近づけてみるか)


 水のメガネのピントを髪が光った方向に近づけていくと……



(……球体?)



 藤崎剣斗自身、動いているため一瞬しか見れなかったが、確かに小さな銀の球体が見えた。


(アクセサリーか? いや……)


 アクセサリーにしては趣向性がなさすぎる。アクセサリーにするならもう少し派手なものを選ぶはずだ。


(それにしても……銀の球体…………どこかで見覚えが……)


 今は思いだせないが、良くないものなのは感覚で理解できる。


「…………」


 確認する必要がある。


「ちょっと外に出てくる」


「え? お、おい!!」


 急に外に出ると言い出した俺に対して、宗太郎は困惑の声を上げるが、俺はそれに構わず、外の廊下へ歩を進めた。









 ――――









 騎道雄馬が外に出た後、部屋の隅っこから、別のきらりと光るものが1つ。



「…………バレたか」



 こうして、運命が偶然か、2人は近づいていく……



 

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