楽しい楽しいお祭りの続き ここからの手順
『決着ーーーーッ!!!! 一瞬ッ! またしても一瞬の出来事でした!! すべての竹が宙に浮き、一気にAチームの陣地へーー!!』
司会者の興奮した声が大きく響く。まぁあの光景を見れば、誰でも興奮するだろうが。
それを証明するかのように、周りの観客も目の前で巻き起こった現象に湧きあがっていた。
(これは俺の力なのか……それとも藤崎剣斗の力なのか……)
まぁとにかく、俺の力を魅せつけることには成功した。先の桃鈴才華よりはインパクトを与えることができたはずだ。
俺がそんなことを思っている間にも、司会者は興奮冷めやらぬ様子で言葉を発する。
『正直、この私も藤崎選手は桃鈴選手には及ばないと思っていましたが……これは評価を改めなければならないかもしれません!! 藤崎選手のこれからの動きには要注目だ!!』
「あ……そうか、しまった」
最初からド派手な事をしてしまえば、これから注目が集まるのは必然。道端にわら人形が転がっていれば注目を集めることと同じくらい当然のことだ。
(まずいな……これじゃあ秘密裏に行動しづらくなる)
ついついその場の衝動に身をまかせ、大胆に目立ってしまった。
しかし、それを差し引いたとしても、俺の心は満足感で包まれている。
あの桃鈴才華より、あの桃鈴才華よりも何かで上回った。注目と引き換えに、桃鈴才華よりも何かで上回れるのなら安いものだ。
(久しぶりに自分の気持ちに正直に動いた気がする……たまにはこういう息抜きも必要かもな)
時と場合による……が。
今度はもう少しラフな場でやろう。そう俺は決心した。
――――
俺は待合室に帰ってくると、大きな拍手と虫のように俺に群がってくる人間に遭遇した。
「ねぇねぇ!! すごかったねあれ!!」
「どうやったの!?」
「どういうスキルなんですかあれ!!」
なんともうるさく群がる奴らだ。もともとは俺もこちら側だったのだが。
群がる奴らを適当にはねのけ、席に座り込む。露骨に嫌な顔をすることで、周りの人間を離れさせることには成功した。
近づけなくなったからと、ジロジロと見てくる奴もいるが、群がってくるよりかは気が楽だ。
「ふぅ……」
(ずいぶんと注目を集めてしまったな……これが悪いことを招かなければいいが…………いや、もう招いているか)
そんなことを考えながら、俺はふうと一息つく。人前に出る事は東一時代もなかったので、精神的に少し疲れてしまったようだ。
次の出番はお昼休憩前。1時間ほど空き時間ができたので、少し休もうかと目をつぶると……
『おい伸太、何を寝ようとしておる』
「……どうした」
『黒ジャケットの出番じゃ』
(……きたか)
ハカセからの直々の任務。その内容に期待しないわけがない。
「内容は?」
『ワシの存在を勘ぐり始めた奴がおる。オヌシにはそいつの始末を頼みたい』
「ハカセの存在に気づくやつだと……? そんな奴存在するのか?」
ハカセの隠密情報収集能力はかなりのものだ。スキルももちろんのこと、その類稀な思考能力から導き出される考察の正解率は郡を抜いている。
そんなハカセの存在を察知できる人間がいるとすれば、かなりのスキルの持ち主に違いない。
「そいつは誰だ? もちろんわかってるんだろ?」
『……うむ、まぁな』
「とっとと言ってくれ。すぐに消しに行く」
『騎道雄馬じゃ』
「……あ?」
ハカセがさらりと発した名前。その名前は妙に聞き覚えがあり、1文字1文字が体に拒否反応を起こさせる代物だ。
「…………殺っていいのか?」
俺は、ダメと言われてきたことがやっと許された時の子供のように、プルプルと震えながらもう一度確認を取る。
『……復讐したいんじゃろう? 思う存分やってこい』
ハカセの声が聞こえると。
俺の口は自然と歪んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます