楽しい楽しいお祭りの続き 魅せつけあい

 さて、ハカセとの会話もだいたい終わり、最初の競技がスタートした。


 待合室の俺たちはテレビで体育館の中を見ることができ、そこで座りながら観戦できるわけだ。


 最初の競技は単純な綱引き。人数が少なくなっただけの簡単な綱引きだ。


 ……無論、スキルを好きなように使えるが。


 そんなこんなで始まった綱引きなのだが…………



『け……決着ーーッ!! 一瞬!! 瞬きした瞬間の出来事ッ! まさに疾風迅雷!! 桃鈴才華率いるAチームの勝利です!!』


(……ほんとに一瞬だったな)


 司会者の言う通り、正しく瞬きした瞬間に終わるほどの一瞬の決着。見た目だけではわからなかったが、間違いなく桃鈴才華のスキル、精神力放出による肉体強化だろう。


 相手選手だって雑魚ではない。むしろこの養成高校ではカーストトップに位置する強さを持っている。

 それを一瞬で下して直、汗1つかかない耐久力の高さ。


(今の俺なら……)


 今の自分なら、あのBチームに勝利するのにどれだけの力を使うだろう。汗1つかかずに勝利できるだろうか。


「…………」


 俺はそれを考え、改めて桃鈴才華とのレベルの違いを実感しつつ……


(だけど……遠くなった訳じゃねぇ……!!)


 自分の成長を、改めて実感していた。


 今までの自分なら、間違いなく負ける前提で考えていただろう。

 しかし、今の俺の考え方は、勝つ前提で考えを進めている。自分に自信がついてきた証拠だ。


「次の競技の出場選手の方々は準備をお願いしまーす!!」


 次の競技は俺の出場競技だ。

 俺は競技に出場するため、席を立って歩を進める。



「……魅せてやる」



 今の俺の力を。









 ――――









『次の競技は……竹取り合戦でーす!!』


 次の競技は竹取り合戦。


 そのルールは、無数にある大きな竹を引っ張り合い、より多くの竹を自分の陣地に運んだ方が勝ちという簡単なゲームだ。


 その性質ゆえ、肉体強化のスキルがかなり有効であり、優位に立てるだろう。


(……と言うか、この体育祭の競技の性質上、肉体強化のスキルはどんな競技でも有利に立てるだろうけどな)


 なので、今は肉体強化型のスキルではない俺は不利……





 ……だと思うだろう。普通は。





「だが……今の俺は一味違うぜ?」



『竹取り合戦!! 開始ーー!!!!』



 開戦の合図がこだました瞬間。



 すべての竹は宙に浮いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る