楽しい楽しいお祭りの続き 悲願と心配
桃鈴才華に復讐する。俺がなす最終目標であり、夢と言えるもの。
しかし、それを成すためには、絶対的な強さを持つ桃鈴才華を倒さなくてはならない。最高にして最大の難関だ。
……そんな桃鈴才華が、今弱っている。
(今この場でやるのは論外だとしても……この祭りが終わった後の放課後なら殺れるんじゃないか?)
試す価値はある。今日の放課後にでも試してみるか。
『おい、伸太』
「……ハカセか」
唐突に現れたハカセの声。その声はいつもより少し低く、ローテンションなのが見て取れた。
俺は小声でハカセに向かって話しかける。
「どうした? 何かあったか?」
『……実は昨日、オヌシが逃した最後の教員にスチールアイを付着させて尾行しておったのじゃが……』
急にスチールアイがいなくなったと思っていたが、まさかそんなことをしていたとは思わなかった。
ハカセは俺が帰宅している間にも、きっちりと仕事をしてくれていたようだ。
「……何か見つかったのか?」
『……最後の教員が電話に出ていた。その内容の一部を聞いたんじゃ』
「…………」
『最後の教員はこう言っておった……"明日の夜、藤崎剣斗を始末します"とな』
「……!!」
驚愕。その一言しか思い浮かばない。
ハカセの言っていることが本当で、本当に最後の教員がそのようなことを言っていたのなら……
「もう、確定じゃないか……!!」
何をそんなに悩む必要があるのか。そいつを拷問し、情報を聞き出すことさえできれば、元の体に戻れるかもしれない。
おそらくだが、俺の拷問している現場を見たのも最後の教員なのだろう。
「何をそこまで悩むんだ? そいつを狙えばいいだけの話じゃん」
『……問題は、その男が藤崎剣斗を始末できるという点じゃ』
「……? それの何が問題なんだ?」
『わからないか? その教員は、藤崎剣斗を"始末"できるんじゃぞ? ……ハイパースキル保持者の藤崎剣斗をじゃ』
「……まぁ、そうだな」
『それすなわち、ハイパースキル保持者を始末できるほどの実力を持っていると言う事……放課後に一騎打ちするのは得策ではないぞ』
「……なら、不意打ちしよう。競技の合間の時間にその教員を見つけて、黒ジャケットとして攻撃すれば……」
『……残念じゃが、今日その教員は体育祭の運営をやっている』
(……あー、そういうことか)
『その教員を放課後以外で殺すには、体育館の中にどうにかして侵入し、その教員を誰にもバレずに殺すしかない。かなりの難易度じゃぞ』
ハカセがここまで悩んでいた理由は、思いのほかその教員がかなりの実力を持っていた事に加え、殺すタイミングがあっちも俺を殺そうとしているタイミングしかないため、不意打ちもできない。
もしかしたら俺が殺されてしまうかもしれない状況に、頭を悩ませていたと言う訳だ。
(……ハカセも俺を心配してくれていたってわけか)
誰かに心配される。そんな感覚も久方ぶりだ。
さっきも桃鈴才華に心配されてはいたが、あれは藤崎剣斗にであって、俺にではない。
俺は心配してくれる存在。そんな存在など、かなり希少と言えるだろう。
「……大丈夫だよ。ハカセ』
『……何?』
「俺は勝つから」
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