すべては明日で
「う〜ん……」
その日の夜、俺は自室のベッドに潜り込んで、今日あった出来事について考えていた。
(……あそこがこうで……いや違うな、矛盾が……)
俺はハカセと飯を終えた後、また少し話して別れるはこびとなった。
ハカセの情報によれば、敵は組織であること、あまり表立って今まで行動してこなかったこと、目的である俺の体の入れ替えの実験台として、罪のない女の子を使ったこと。この3つだ。
極論、この3つに当てはまる組織を見つければいいのだが……これがまた難しい。
そもそもそんな組織を調べる方法がない。表立って行動してこなかった組織なら、情報ももちろん出てこない。東京派閥の線も組織という点で一致しているため、少し考えたが、表立って行動していないという点には全く当てはまらない。全く逆だ。目立ちすぎる。
(しっかし…………今まで考えてきた俺の考えが完全に破綻したな……)
今まで、俺は妹を犯人の最有力候補として見ていた。
しかし、犯人は組織で動いている。妹という線はかなり薄くなってしまった。
ハカセの情報が間違っている線もあるにはあるが…………
(いやない。それはない。絶対に)
前にも言ったと思うが、俺はハカセに全幅の信頼を置いている。
それは単に仲がいいからとかそういうものではなく、実績に基づいたものである。
それぐらいハカセの情報は正確かつ的確なのだ。
(情報は集まった……後は俺が考えるだけだ)
…………と、そう考えた俺に、ハカセと俺が別れ際に行った会話がフラッシュバックする。
――――
『明日、オヌシの通う……いや、藤崎剣斗が通う養成高校で文化祭と体育祭があるじゃろ?』
『ん? ああ……知ってるのか?』
『東京派閥の人間なら誰でも知っておると思うぞ……その時にいろいろ探ってみろ、面白いものが見つかるかもしれんぞ』
『…………本当か?』
『老いぼれのカンじゃ』
――――
(老いぼれのカン……ねぇ)
「…………すべては明日……ってか?」
――――
ここは東京第三養成高等学校。東京派閥に4つある養成高等高校の1つである。
養成学校なのに高校ってどういうこと? と思う人もいるかもしれないが、とにかく高等学校でありながら養成学校なのだ。異論は認めない。
そんな4つある養成高校の一つ、第三養成高等学校の無数ある教室の中に、なぜか煙が待っている教室が一つ。
そこには明かりは一切なく、とある生徒が椅子に腰かけ、まるで自分の自室のように居座っていた。
「……ふぅ〜………………うぇ〜……まずいな、これ……」
その人物は夜目が効くようで、明かりは一切ついていない。煙がその部屋にだけ舞っているのを見ると、どうやらタバコを吸っているようだった。
もちろんタバコは違反行為であり、学校の教員に見つかれば、それ相応の処罰は逃れられない。もちろん、そんなことは生徒もわかっているだろう。
「すぅ〜……ふぅ〜………………ゴホッゴホッ!!」
その生徒は周りを気にすることもなく、タバコを吸っては吐き、その煙でむせる行為を繰り返す。その行為の意味は理解できないが、その生徒にとっては重要なようだ。
その生徒は再び咳き込みながらも、ポケットの中から写真を取り出し、それをじっと見つめてつぶやく。
「ゴホッゴホッ…………でも、ようやく行けるんだ……」
そして、その写真の中に写っていたのは………………
「あの人のいた…………東一に」
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