難しい
次の日、俺はいつも通り? 学校に登校し、机に座って授業を受けていた。当たり前の事だが、授業の内容は1ミリも理解できない。
「……で、ここが二次関数……」
(…………意味わからん)
どうやら数学の授業の様で、普通ならば頑張って数学の問題を解くところなのだろうが、俺は問題の事など考えず、そんな時にこの肉体の事について考えていた。
そもそも俺がなぜこの肉体の中に入ったのか。まずそこから考察しなければならない。
(まず、容疑者として考えられるのは…………)
方法などを一度完全無視して容疑者として考えられるのは、この肉体の元の持ち主である藤崎剣斗。次に藤崎剣斗以外の家族。そして東京派閥の3つだ。
(……いや、東京派閥は容疑"者"ではないか……容疑"物"? どちらにしろ、その3つが俺に対して何かしたと言う可能性が高い)
なぜそれらの中に犯人がいると思うのか。それは今の俺の立場や藤崎剣斗と言う人物を考えるとわかる。
まず、犯人はこの肉体の持ち主であった藤崎剣斗であると言う可能性。
こう考える理由は単純で、今の俺の肉体が藤崎剣斗であり、俺に1番密接に関わっている事である。俺の乗り移った体が藤崎剣斗の肉体である以上、何かしら藤崎剣斗が関わっていることは間違いない。
ただ、だからといってハイパースキル保持者である藤崎剣斗がわざわざ自分の体に俺を乗り移らせたと言うのは少し疑問だ。
ハイパースキル保持者ならば、何ら生活の不自由なく過ごせるはず。かわいい妹に美人な母親、学校に行っても女にモテまくり。2日しかこの体で過ごしていないが、自分の体を渡そうと思うほど、苦しい思いをしたとは思えない。
しかし、まだ俺が体験していない嫌な事があったのかもしれないと思うと、可能性は低いが容疑者として挙げるに値するだろう。
次に藤崎剣斗以外の家族。これが現時点で俺が考える1番可能性が高い容疑者だ。
藤崎剣斗が高ランクスキル保持者であると言うことを考えると、その妹や母親、仕事であまり帰ってこないらしい父親も高ランクスキル保持者である可能性が高い。
もし藤崎家がハイパースキル保持者だらけの超エリート一家だったのなら、人の肉体を入れ替えると言うぶっ飛んだこともできなくはない。
動機としても、藤崎剣斗に家族全員が不満があったと考えれば、十分な動機になりうる。
(家族全員なら、体が入れ替わったと分かっていても、全員で白ばっくれる事ができるからな…………)
さらに家族だけの秘密にできるため、情報を探すのが非常に困難になる。隠蔽工作も容易と言うわけだ。
しばらくはこの家族を容疑者として行動していくことになるだろう。
…………最後に考えるのが、東京派閥が仕掛けたと言う可能性だ。
自分で言っといてなんだが、これは99%ありえない。
そもそも俺1人に対して大派閥が動く必要性がわからない。動機はあるが、上の頭の固い大人が動いたと思えない。これはおまけ程度に考えた方がいいだろう。
――――
(しかし……今はまずい状況だな)
その後、俺は通常通りに学校を終え、家への帰宅の道を歩いていた。
なぜまずい状況なのか。それは情報が集めずらい現状にある。
今の俺は現役高校生。元高校生ではないのだ。
家では常に家族に見られ、学校では常に女に見られている。この状態で情報を集めるのは至難の業。今のところ、完全にハカセの持ってくる情報頼りになってしまっているのだ。
しかも、そのハカセの情報がいつ届くかわからない。その間待つだけと言うのは非常にもったいない。
(何か良い方法があればいいんだが……)
そんな事を考えているうちに、家にたどり着いてしまった。結局、良い方法は何も思い浮かばなかった。
(…………まぁ、大丈夫か)
今のところ妹にしか疑われている様な様子は無い。そこまで焦る必要はないだろう。
「ただいま」
「おかえりー」
家に入った瞬間、誰か女らしい声が聞こえる。声色から見て妹だろう。
(いまだにわかんねぇな……)
本当の家族ではないため、声がいまだに区別がつかない。母親と妹の声の区別とかマジで声の高さが一緒すぎて区別がつかん。
俺は階段を上って自室へ向かっていく。この動きはスムーズにできないとおかしいので、学校の授業中に死ぬほどイメージトレーニングをした。
そのおかげかスムーズに自室に移動し、体を休める事に成功した。
(…………駄目だ。今考えてみれば、リスクなしで情報集めなんて事自体が駄目だった。なめくさりすぎだ)
それに焦る必要がないだと? 違う。焦る必要がない状況だからこそ、情報量でリードを取るのだ。
敵が意味もなく俺を藤崎剣斗の肉体に入れるわけがない。何か考えがあるはずだ。もしかしたら、その考えを実行するのは今日かもしれない。
そうやって考えていくと、いち早く情報を集めないといけないと言う思いが膨れ上がっていく。
(まずは今日の夜…………家族の情報を抜き取る!!!!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます