オレオレ詐欺
『……久しぶり? なんの事だ』
(……あ、そりゃそうか)
今の俺は体が変わった影響により、声色も変わってしまっている。そんな声で久しぶりなんて言われれば、怪しまれるのは必然。
「あ〜……俺だよ、俺俺」
『…………オレオレ詐欺ならお断りだぞ』
しまった。元の俺の声に似せようと声を変えたら、声が出しづらくなって端的な事しか言えなかったぞ。このままでは怪しまれるばかりだ。
…………正直、ちょっとふざけた。
まぁ、怪しまれる事など想定の範囲内。目に見えていた。
このままだと本当に電話を切られかねないので、とっとと白状するとしよう。
「冗談だよ。冗談冗談。伸太だよ」
『はぁ……? 伸太だと……?』
伸太と言う名前を聞くと、さすがに動揺したのか、電話の奥で黙りこみ、10秒ほど静寂の時が訪れる。
『……どこでその名前を知ったかは知らんが、俺の耳はごまかされんぞ。声色が全く違う』
「…………」
さすがはハカセだ。少し揺さぶられた程度ではびくともしない。俺が本人か伸太の関係者だと言う事がわからない限り、言うつもりはないのだろう。
……しかし、俺はこうなる事を想定して、秘密兵器を用意しておいたのだ。
そしてこのタイミングこそが使い時。秘密兵器の投入だ。
「……俺たちは東京の路地裏で出会った」
『…………何?』
「ハカセが取引をしている現場に俺は遭遇し、自暴自棄になって戦闘を開始。しかし、ハカセの攻撃を受けて返り討ちになり気絶した」
『おい、一体何を……』
「その後、下水道に連れ去られた俺は、その場で復讐を決意。その日の夜にレベルダウンを壊滅。店主に傷を治された対価として神奈川派閥のウルトロンを奪取を命じられた」
『確かに……まぁ……そうだが……』
「神奈川へ向かう直前、黒のポーンに遭遇し逃走。そのまま神奈川に侵入し、神奈川と東京の同盟が取り決められる前に会場に侵入しウルトロンを奪取」
『ちょっ……まっ……』
「その後、とある病院で目が覚めた俺に対して報酬の黒い剣を渡し、俺に大阪に行くのを進めて……」
『わかった!! わかったから!! わかったからやめんか! 頭おかしくなるわい!』
俺がまるで早口言葉の様な速度でハカセとの出会いと別れを語っていると、ようやく観念したのか、ハカセの口調がいつものに戻った状態で大きな声を上げた。
「や〜っとわかってくれたかハカセよ」
『じゃが……にわかには信じられんぞ?』
「そこは説明する」
俺は昨日の夜から起こった事を一つ一つ、事細かに話した。
朝目覚めたら姿が変わっていた事、場所が東京だった事、その他諸々。本当に何もかも全てだ。
『なるほどのう……信じがたい話だが、ありえない話ではない…………まぁ、作り話なら、そんなに事細かに設定を練っているとは思えんしな』
まだ疑ってやがったのかこのジジイ……
(まぁ……仕方ないっちゃ仕方ないけど……)
俺自身もこんな現象、見た事も聞いた事もない。疑い続けるのは当然。
『……まぁ、調べてみない事には始まらんな。ワシもワシなりに調べてみるわい』
「ああ、できるだけ早く頼む」
『…………ちなみに、伸太のスキルは?』
「反射と闘力操作だよ!!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます