考察と夢

「……………」


 授業中、俺は今後の自分の行動について考えていた。


 10分休みの時は、授業中、退屈すぎて死にそうになっていたが、その時間を今後どうするかの考えに使えば退屈しないことに気づいた。


 いつもならば、戦闘中とかに考える事など普通だったのだが、授業と言う懐かしい時間に戸惑っていたらしい。


(……まず、この肉体は何なのかだな)


 この肉体の宿主の名前は剣斗と言うらしい。年齢としては高校2年生なので、おそらくは同い年。超絶美形のイケメンでノートを見る限りかなり勉強ができた方みたいだ。


 こんな理想を現実にした様な人間、いるわけがないとほっぺをつねったり、耳たぶを引っ張ったりしてみたが、しっかりと痛い。これは夢ではなく、れっきとした現実のようだ。


 そして、寝ている間に俺の体が変わっていた事、ノートやバックに入っているスマホの履歴を見ても、剣斗と言う人間は作り物ではなく、しっかりと存在していたこと


 これらの事実を受け止め、パズルのピースの様に当てはめていくと、ある1つの仮説にたどり着く。




「俺は……憑依しているのか……?」




 現実ではありえないと思われた、体への憑依。俺はそれを実際に体験した可能性がある。


(いやいや、絶対にありえない。ありえないんだが……)


 今までの経験がなければ、すぐにでも俺はありえない可能性だと考え、憑依したと言う択を消していただろう。


 しかし、今までの俺の戦いの記録の中で、体が入れ替わる現象に心当たりが1つ。


(レベルダウン……)


 レベルダウン。かつての東京派閥最強戦力の1つであり、敵のスキルを無効化する兵。


 俺にとって、初めての明確な敵であり、脳を新しい体に入れ替え続ける事によって、不老不死を可能にした死なぬ兵だ。


「…………」


 つまり、ここが東京派閥だとわかっている以上、体を入れ替える技術と言うのは確かに存在するのだ。


 俺の脳を夜中のうちに回収し、あらかじめ作っておいた体に入れ替えることができれば、理論上は可能ではある。


 しかし、今は何の情報もない。何の情報もない以上、どんなに考えたところでそれは仮説にもならない。ただの妄想だ。


 俺は一度、体が変わっている理由を考えるのを放棄し、確実に今知れる事について考える。


(そうだ……今はそんな事考えていても仕方がない……今問題なのは……)


 俺のスキルが使えなくなっている事。それが今1番問題なポイントだ。


 さっきから闘力を体に巡らせようと頑張っているのだが、体に全くと言っていいほど闘力を感じない。十中八九、体が変わった影響に違いない。どうやらスキルと言うのは人の精神ではなく、肉体に残るようだ。


(しかし、俺のスキルが使えなくなったと言う事は、この体のスキルが使える様になっているはず……)


 体が変わったのがスキルが使えなくなったトリガーならば、もともとこの体に宿っていたスキルが使用可能になっているに違いない。



 後はどうやってそのスキルを知るかだが……



(その点は問題ない。あてはある)



 スキルは後々知るとして、次に考えるべきはこれからの行動だ。


 現在、俺は学校に通っており、周りに不審がられない様にするためにも、これからも学校に行く事は必須となるだろう。


 そうなれば必然的に、俺の行動範囲もかなり制限される。


 昼は休日以外学校にいるため、もちろん情報集めなんてできないし、放課後は元のこの肉体の知り合いにあってしまう可能性が高いため駄目。


 だからといって深夜に情報集めするにしても、学校の登校時間に間に合わせないといけないため、使える時間なんてほんの少し。


 さらに言えば、情報が集める方法もどんな情報を集めたらいいのかもわからないため、俺の体の情報を掴むのは困難を極めるだろう。


(だが、どちらにせよ情報集めをしなければ次には進まない……やるしかないんだ……!!!!)


 とにかく今日の夜にでも情報集めを実行するしかない。それまではこの体のスキルを調べるなり、元の体の持ち主の事を調べたりしなくては。



 そしてそのためにやるべき事は1つ。






「あの……先生すいません……具合悪いんで帰っていいですか?」


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