勝ちへの道筋

「はい、あ〜ん」


「あーん……」


 俺は袖女に卵粥を食べさせてもらっていた。


「はーい、次行きますよ〜」


「…………」


 さっきからどうにも袖女の機嫌がいい。こちらも機嫌が悪いと言うわけではないのだが、いかんせん小っ恥ずかしい。誰も見ていないと分かっていても、なんだかむず痒さがある。


「……あ、そういえば……聞きたかった事があるんですけど」


「んぐ……あ? 何だ?」


「なんで牛のスキルがわかったのかなーって……」


「……それ知って何になるんだ?」


「私も戦場が仕事場なんですよ。それの参考にと思って」


「……まぁいいよ。知られても都合が悪いもんじゃないし」


 俺はベッドで楽な体勢のまま、牛のスキルを気づいた理由について話し始めた。


「そもそも、牛のスキルには所々疑問な点があったんだ」


「疑問?」


「ああ、1つはだんだんと半透明になって消えていく事。もう1つは無敵状態になっている時の動きの制限。この2つだ」


「……? それが何なんですか?」


「わからないか? 普通透明になるスキルなら、一瞬で透明になってもいいはずだ。なのになぜわざわざ半透明になる?」


「さぁ……そういうスキルなんじゃ……」


「その考え方が甘い。頭が固いぞ。なぜ半透明になるのか。それには理由があるはずなんだ。そうなるものじゃない。なぜそうなるのかを第一に考えるんだ。そうなればおのずとスキルの弱点が見えてくる」


「無敵状態になっている時の動きの制限もそうだ。透明になっているのなら、透明になっている時でも攻撃できない事はないはず。と言う事は、無敵状態の時に何かの仕掛けがあるはず」


「なるほど…………」


(俺の場合は偶然だったが……いい顔しとこ)


「じゃあ……なんで半透明の時は攻撃が入るってわかったんですか?」


「まぁ……そこは偶然なんだけど……袖女が到着するより前に、無敵状態が切れた瞬間に攻撃を入れると、なぜか声を上げて痛がってな……もしかしたらと思ったんだよ」


 あれも本当に偶然だった。俺があの出来事を思い出していなければ、水滴に身を任せてそのまま突進するなんて事、怖くて考えられなかっただろう。運も味方につけたと言うことである。


「戦っているのに、よくそんなところを観察できますね」


「とあるジジイに教えてもらってな……あ、卵粥ごちそうさま」


「はい、お粗末さまでした」


 俺が卵粥を食べ終わると、袖女は立ち上がり、卵粥の入っていた器をキッチンへ運ぶ。


さて、これで再び1人になったわけだが………


(なんか疲れたな……)


 長ったらしい説明をしたからか、何だか眠くなってしまう。これからの事を考えようかと思ったが、なんだかもう疲れて何かを考えたくない。


(もともと怪我人なんだし……未来の事は未来の俺にまかせよう)


 俺はベッドに寝転び、瞳を閉じ、ベッドの柔らかい感触に包まれながら眠りについた。

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