リベンジマッチ その2
「ゴアアア!!!!」
(右に2回……それと左に3回!)
牛の上半身から放たれる拳のラッシュ。俺はそれを正確にとは言わないが見切り、攻撃を回避していた。
俺が見たところ、牛の攻略法は2つ。
圧倒的なパワーによって一撃で仕留めるか、牛の攻撃を回避し続けて、スタミナ切れを待つかの2択。
2つ目のスタミナ切れを待つのはありえない。さっきから回避し続けているが、牛のスタミナが切れるような所を全く見せないし、もともとこちら側の方が体力の少ないところからスタートしている。このまま行けば、もしかしたら牛のスタミナ切れが起こるかもしれないが、先にこちら側のスタミナが切れるだろう。
なので俺に残された択は1つ。圧倒的なパワーで粉砕する。それもたった一撃で。
(厳しいな……)
分かり切っていた事だが、なかなかにきつい戦いだ。そもそもこちら側の方が地力が劣っている事は前の戦いでわかっていたのに、こちら側が戦ってすぐにこの牛は乱入してきた。
ただでさえ不利だった対面が更に不利になっているのだ。
体力も限界が近く、焼けただれた腕は感覚がなくなりつつある。
しかし、体中から溢れるアドレナリンと、牛への殺意で不思議とスタミナ切れ特有の体から力がなくなっていく感覚は感じない。
おそらくだが、極度の興奮状態によってスタミナ切れを最後の最後まで感じさせない体になっているのだろう。スポーツしている時に感じるあれだ。
もはや戦術以外に考える脳はない。ブラックがどうなったとか、家で袖女は何をしているんだろうとか、全く考えていられない。今の俺は戦闘狂。戦うだけの戦闘マシーンだ。
まぁどちらにしろ、隙を作らなければならない。強力な一撃を決めるための隙を。
「グルゥ!!」
と、思った矢先に、牛が大きく振りかぶって拳を打ち込もうとしてくる。
相手の隙を作るのならここしかない。拳を打ち込んだ後の追撃に時間ががかかるこのタイミングしかないのだ。
俺は両腕をクロスし、牛の拳に対してガードの姿勢をとる。普通なら回避できるような予備動作見え見えの拳。俺はそれに対して、あえてガードの姿勢をとったのだ。
そして、その牛の一撃は……
ついに、俺の腕に直撃した。
――――
誰もが知る大派閥、大阪。
そこにはたくさんのビルが並び、夜なのにも関わらず、昼のように明るい。
もちろん耐久性も凄まじく、そこらのグレネードや爆弾では壊れない耐久力を誇る。
そんな大阪は今…………
壊れに壊れまくっていた。
ビルは倒壊し、木々は根っこから引き抜かれ、爆風によってガラスが割れる。
そんな爆風吹き荒れる大阪の中心には。
牛と青年が立っていた。
――――
「……っ! っ!」
吹き荒れる逆風。両腕にのしかかる重圧。骨が粉砕骨折するんじゃないかと思うほどの激痛の中、俺は地に足をつけ、しっかりと立っていた。
こういう時は、しっかりと耐え凌ぐのがミソだ。ここで腰をひいてしまい、痛みから逃れようとしてしまうと、そのまま拳に押しつぶされ、背中に地面をぶつけて逆に大ダメージを受けてしまう。
なのでここはとことん突っ張る。突っ張る事こそがダメージを抑える攻略法なのだ。
闘力操作を腕に使っているのにもかかわらずこのダメージ。腕が折れずとも、骨に何かしらの影響は与えているであろう衝撃だ。
こうなる事はなんとなくわかっていた。この一撃が致命傷になるかもしれないと言うことも、致命傷にならずとも、多大なダメージが入ることも。
だが、こうしなければならなかったのだ。こうしなければチャンスはやってこないから。
「今度は……」
俺は腕に入った攻撃が終わった後、まだ触れている牛の拳に対して反射を発動。無防備な拳を一気に弾き飛ばした。
「こっちの番だ!!」
牛の拳を弾き飛ばすとどうなるか。腕が弾き飛ばされて体の後ろに飛び、腹をこちらに見せる体制になるのだ。
つまりは隙ができる。
ついに作り上げた隙。ここを逃すわけにはいかない。
俺は強く右拳を握り締め、大きく大きく振りかぶる。
体より後ろに飛んだ腕を戻すのは、タイムラグが発生するのだ。
これならばできる。普通なら振りかぶっている途中に攻撃されるものが、これならばフリーで攻撃することができるのだ。
闘力操作プラス反射プラスパワー。今の俺の全て。今の俺が出せる限界。それを全て1つに合わせ、牛に向かってぶつけるのだ。
「死ね!」
そうやって発射された拳は。
見事、牛の腹に直撃した。
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