頭戦 その2

 足に反射を使用し、一気にダッシュ。ぐるぐるしている時よりも速い速度で向かっていく。


「捨て身の特攻か?」


(んなわけねぇだろ!!)


 無論、俺がそんな未来も見えないことをするわけがない。


 ジジイまであと1メートル……と言うタイミングで俺は地面に拳を打ちつけた。


「何だ?」


 ここらの地面は瓦礫にまみれており、かなり柔らかいものだ。少し衝撃を加えただけで、すぐに凹みが波のようにできあがる。


 そんなところに俺の拳が突き刺されば……その結果はお察しだろう。


 当然、ぐるぐるした時と同じように砂埃が巻き起こり、あたり一帯が見えなくなった。


「ふん……芸がないのう」


(しゃあねぇだろ……周りにあるものが瓦礫しかねぇんだからな……まぁ、俺がやったことなんだけど)


 自分でやったことだが、周りに利用できるようなものがほぼない。正確には、利用できるものはあったんだろうが、瓦礫に埋もれてしまって無と化している。


 それにより、相手に向けて使うかく乱方法が瓦礫を使っての目くらましだけになってしまった。それが突破されてしまったのならば、意味のない行動だが……ぐるぐるしまくる戦法の時、俺が攻撃をするまで何もしてこなかったところを見るに、この砂埃に対する対抗策は無いと見ていい。


 対抗策がないなら、やらないと言う手はない。やっておいて損はないと言う奴だ。


 さて、ここからは俺の考えた策の説明に移ろう。


 俺の考えた策と言うのは、"不意打ちで1番火力の高いパンチを叩き込む"と言うものだ。


 もし俺の心を読んでいる人間がいるのならば、俺の考えを聞いて、「いや、物理攻撃は効かんってわかったじゃん」と思った人は少なくはないだろう。いや、実際その通りである。


 確かに、ぐるぐるしまくる戦法によって物理攻撃は無効化され、効かない事がわかった。


 しかし、もしかしたら、生物の体での物理攻撃なら効果があるかもしれない。


 それとも前に言った通り、無効化できる威力に上限があるのではないだろうか。


 それならば効くかもしれない。もしそうでなかったとしても、敵の無効化の原理は? なぜ無効化できるのか。


 真に強いものならば、無効化できると言う事実をそのまま受け取るより、なぜ無効化できるのかと考え、考察しなくてはならない。そして、わからないものは実践するしかない。


 勘違いしないで欲しいのだが、この策はまだ相手のスキルを見るために行うのではない。これはあくまで敵を殺すために打つ一手だ。


 この策が効果的だった場合、びびって弱い攻撃で試してしまうと、あのジジイに警戒、対策されてせっかくのこの策が意味なかったなかったことになってしまう。



 だからこそ。




 その一撃だけで。今自分が持ち得る最強最高の一撃で。







 破壊する。






「反射………闘力操作………」


 俺がここで叩き込むのは、最初の頃から使っていたあの一撃。足に反射、全身に闘力操作を使ったジェット機並の速度から放たれる一撃。


 ただ、今までの戦いの中で、闘力操作も大幅にパワーアップしている。最初の頃の闘力量がコップ一杯分だったとしたら、今ではトラック一台分の量にまで上っている。


 そうなれば当然、一度に使える闘力量も増える。俺は闘力を今までより多く使う事で、今までより大幅にパワーアップした一撃を放つことを可能にしていた。


 これならば崩れやすい瓦礫の上でも、硬い地面でやるのと遜色ない。


 そんな強力な一撃を放ってしまえば、周りへの被害も尋常ではないが……この際、そんな事は構っていられない。すぐに設計図を盗んで逃げてしまえば大丈夫だろう。



 俺は足を、深く深く踏み込み……



 駆けた。



 聞こえない。静寂の時。普通なら、後ろから爆破音が聞こえてくるはずなのに、何も何も………いや、耳鳴りなら聞こえる。


 その現象は、俺が音を置き去りにしたことを証明付けていた。


 次に音が聞こえてきたのは……ジジイの目と鼻の先にたどり着いた直後のことだった。



 そこでやっと、後ろから爆破音が聞こえる。全てを置き去りに、全てを凌駕して、俺の世界には誰もいない。



 そうして、とても自然に。あたかも当たり前かのように……



 右拳を、前へと突き出した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る