利益を求めすぎた結果
「しまっ……」
気づいた時にはもう手遅れだった。
「がああああああ!!!!」
腕に、肩に、足に、様々な痛みが襲いかかる。
刺された痛み、焼かれる痛み、今までに感じたことのない痛みが体中に駆け巡る。
腕に反射を使い、頭をガードするように巻きつける事で、頭だけはダメージを防ぐことができた。
(痛え!! 痛え!! 痛え!! 畜生!!!)
次々に様々な攻撃が繰り出されてくる。
その底の無さは、精神的な恐怖と苦痛が湧いてくるほどであった。
だが、それと同時にふと1つの疑問が思い浮かぶ。
(……チェス隊って……本当にこの程度なのか?)
ふと思い浮かんだ疑問。
それもそのはず、事前情報によればこの会場には、チェス隊が全て揃っている。さらには、今突入しているのは俺1人。
複数人ならばともかく、突入しているのが俺1人に対し、ここまで時間がかかっているのは少し妙だ。
実際、いくら時間がかかったかはわからないが、体感的には数十秒はかかっている。
これが事実ならば、明らかにおかしい。
この考えが正しければ……今、チェス隊は手を抜いていると言うことである。
(なぜ? 何のために?)
チェス隊が俺に対して手を抜く理由。
考えろ、情報を分析しろ、周りをよく見るんだ。
普通に考えて、チェス隊が俺に対して手を抜く必要はない。俺の反射も、黒のビショップの動きからして知っているとは考えにくい。
……周りは? ……周りはどうなっている?
俺の周りには、東京派閥代表、神奈川派閥代表、チェス隊、東京の実力者たち、後は…………
(……そういうことか)
間違いない…………マスコミの所為で俺を殺せないんだ。
マスコミのカメラは今、生放送で神奈川派閥中に生中継されている。兵士らしき人物が下がるように促しているが、マスコミはそれを押しのけ、俺を移すのに夢中の様だ。
そんな中、俺を殺してしまえば、チェス隊の評価はガタ落ち。
世間からの批判は免れないだろう。
だからこそ、チェス隊は本気を出せない。俺を生け捕りにする選択肢しかないのだ。
……俺は半ば先入観で、会場に入るのはリスキーすぎると思っていたが……突入すること自体は、悪い案ではなかったようだ。
ならば……解決策はある。
「…………っ!! がああああ!!!」
俺は、反射を宿した右腕を振り回すことによって、絶え間なく続く攻撃を一旦食い止めようと動き出す。
案の定、俺の反射によって攻撃の大部分が反射され、攻撃を一旦止めることに成功した。
だが、これで終わりではない。すぐにでもまた攻撃を仕掛けてくるのは間違いない。この状況を打破するには………
ハカセの力を借りるしかない。
「ハカセ!!」
『なんじゃ!?』
ハカセもこれはギリギリの状況だと言うことを理解してくれているようで、足早に声を返してくれた。
もはやあまり時間はない。ハカセに対して単刀直入に、やってほしいことだけを伝える。
『まて、それはどうゆうーーー』
「きたぞ!!」
またしても攻撃が襲いかかる。今度は、鉄パイプだったり、何かゼリー状の物だったり、明らかに物量が増えていた。
……だが。
「今だ!!!!!」
『あーくそっ!! やってやるわい!!!』
今回は対策済みだ。
俺に攻撃が当たろうとした瞬間。急に俺の目の前で大きな鉄の球体が出現する。
そう、これがハカセに頼んだ対策。俺が貼れる唯一の罠。
巨大化したスチールアイを盾にすることで、攻撃を防ぎ、その間に天井の穴から抜けてしまおうと言う考えだ。
一見無謀にも見えるだろう。チェス隊の攻撃なのだ。そこらのでかい鉄の玉ごときで防げるようななまっちょろい代物ではない。
だが、今は違う。
マスコミがいる以上、物量が多くなろうが、手が抜かれているのは明白。
ならば、一瞬位はーーーーー
耐えられる!!!!
思ったとおり、攻撃を受けた瞬間、スチールアイは一瞬でひび割れ、その役目を果たそうとする。
だが俺にとっては……その瞬間があれば十分だった。
スチールアイが攻撃をガードしたその一瞬、その刹那。
俺は空へ飛び出した。
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