ヒニチジョウが終わる最後の日


 ……次の日になった。


 任務は明日だ。つまりこれは最後の日。ハカセは俺に気をつかってくれたのか、夕方まではゆっくりしていいと言った。


 それを承諾した俺は、神奈川に来たときに初めて降り立ったビルの屋上に立っていた。


 ……ある意味、この任務は田中伸太と言う人間のターニングポイントになるだろう。

 東京にいた時のレベルダウン作戦の時とは訳が違う。マスコミもいる中での大々的な犯罪だ。東京では、警察殺しで俺の名前もちょっとは有名になっているだろうが、所詮はニュース、そこまでがっつり俺の名が上がったとは言い難い。

 だか今回は違う。神奈川と東京、2つの派閥入り乱れるこの会議で俺の犯罪がバレれば、知名度はぐんと引き上がるだろう。


 ……RPG風に言うならば、今の俺には"たたかう"と、"にげる"の2つの選択肢がある。


 "たたかう"を選べば、文字通り犯行に及び、ばれるかバレないかの瀬戸際を争うことになるだろう。もちろんバレずにウルトロンを奪うことができたならば、とてつもない儲け物だ。


 反対に"にげる"を選べば、俺は任務を達成できず、あと1ヵ月の間、もがき苦しみ、死ぬことになる。


 ……その分、人に迷惑をかけることもない。


 ……普通の人間であれば、どちらを選ぶかはわからない。


 生き残りたければ"たたかう"を選び、根っからの善人であれば"にげる"を選択するだろう。

 それは当たり前であり、人それぞれであるのが現実だ。


 ……だが








 今の俺は








 違った







 "にげる"を選ぶ理由がなかった





 人の事など





 周りの事など…………もうたくさんだ。







 オレは…………永遠に……












 "たたかう"

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