幕間 護衛任務 その2
「うむ! いい返事だ! 特に桃鈴も行ってくれるのは助かるぞ」
まずいことになった。その場の空気で4人に続いて言ってしまったが、今はそんなことをやりたい気分ではない。
「当然でしょう。桃鈴様にできないことなどありません」
……なぜそんなことを言う? 僕にだってできないことぐらいあるわ。
……だめだ。人の悪口を言うなんて僕らしくない。
こうなったら、この機会を気分転換と考えよう。神奈川には前、挨拶に行った時にできた友達もいるし相談に乗ってくれるはずだ。
「よし、みんな参加が決まったところで、任務の内容と場所について説明していこうと思う」
高橋先生は上機嫌で任務の説明をする。
「場所は、神奈川派閥、A市午後3時に1時間ほど行われる。君たちには、東京代表の護衛、また取引物の護衛をして欲しい」
なるほど……要するに取引場所で警備員をしてほしいと言うことだ。内容だけで言えばそこまで複雑でもない単純な仕事。任務を受けたことがない僕らに向けられた任務だということが露に伝わる。
「もちろん君たちの周りには、他のハイパーやスーパーの兵士たちも付いている。先輩たちにたっぷりと任務のいろはを学ばせてもらうと良い。まぁ、そこまで気負う必要はない。職場体験だと思ってもらえればいい」
高橋先生は僕たちをリラックスさせるような発言をするが、だからといって学生である僕たちをこのタイミングで現場に出すのは少しおかしい。その時点で僕たちを無理にでも出さなければならないほどの大事な取引だということがわかる。
僕がそんなことを考えているとはつゆ知らず、そばにいる雄馬くんが発言する。
「先生、取引が始まる日時は?」
「おおっと、すまない。忘れていたよ。取引が始まるのはこれから2週間後の7月後半の○日だ。その時に予定は空けておいてほしい」
「了解しました」
7月後半か……別に予定はスカスカだし、僕的には全く問題は無い。
「よし! これにて、この話は終わりとしよう。みんなも帰ってゆっくり体を休めてくれ」
そう言って、高橋先生は体育館を出て行く。僕たちを任務に参加させることに成功したからか、背中からも生気が溢れているように思えた。
「桃鈴様。これからどうしますか?」
優斗くんが僕に対して聞いてくる。
「うーん……今回はこのまま解散でいいんじゃないかな、まだ1ヵ月後だから相談もクソもないしね」
「ですが……」
「それに僕……ちょっと疲れちゃった」
「……了解しました」
そう言って優斗くんはその場をひいてくれた。
この4人は基本、僕が嫌がる事はしない。…… 4人が僕の嫌なことに気づいていればの話だが、今回は通じた様だ。
「では、今日のところはここら辺で解散にしましょう。桃鈴様も疲れてしまっているようだ」
友隣ちゃんが他のみんなに解散を促す。他の3人もそれに従い体育館の出口に歩いて行く。
ここから皆が、僕がどんな道を歩んでいくのか……まだまだわからないことだらけだ。
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