銃口
「がぁ……え?」
動かない。見事な程に何も動かない。まるで金縛りにあったかの様だ。
(まずい! このままじゃ……)
撃ち込められる。案の定、俺の背中に銃弾が突き刺さる。背中を走る異物感、嘔吐してしまいそう嫌悪感に駆られる。
それなのに…………
(なんで動かないんだ!?)
俺の体が石像になったかの様だ。そして目の前には女ただ1人。
女はハッとした表情になり、銃を構えて引き金を引いてくる。
銃口はもちろん……俺だった。
(マズい! 反射ーー)
腹に刺さる。
「ガハッ……な……んで…………?」
貫かれる。俺は反射をしたはずなのに、しっかり跳ね返した筈なのに、銃弾は腹をさらに貫く。
どくどくと流れ出てくる血には目を向けず女は発言する。
「はぁ……はぁ……ハハハッ!! どーだ! まいったか! ……へへへ、もう出てきていいよぉ!」
そう言うと、部屋の物陰からヌッと出てくる人影、それも1人ではない。2人、3人とその影をあらわにしていく。
それがざっと50人に行ったところぐらいまでで影の連鎖は止まる。
(あいつらは……)
決まった隊服、セットされた髪、精密機械のように寸分の狂いもなく歩いてくる。
(レベルダウン……)
天井にぶら下がっている真空パックのような物の中の体が本体だと思っていた。だが違った、最初からスタンバイされていて最初から動きを読まれてしまっていた。
……つまり作戦だったのだ。最初は2人で戦っておいて、危なくなった時は合図を送り、身を隠していたレベルダウンが俺の動きを無力化する。
これにより、兵力を減らすことなく俺を排除することができる。
「いやぁ〜ホント助かったよ! あの男大口叩いておいてすぅ〜ぐ使えなくなっちゃってさ!」
「イエ……仕事デスノデ」
レベルダウンの1人が片言気味で喋る。レベルダウンのリーダー的なポジションだろうか?
気のせいかレベルダウンの声が本当に機械の様に聞こえてしまう。
(……こんなことを考える場合じゃない! 早く脱出しなければ、考えなくては! こんなところで終わりたくない! こんな最初でつまづいちゃダメなんだ! まだ……俺は……復讐を……)
終わらせてない。
「じゃぁさぁじゃぁさぁ! もうとっととその仕事ってやつ終わらせようよ! すぐにやっちゃってさー!」
「ソウデスネ」
レベルダウンの1人が腰のホルスターから銃をゆっくりと取り出す。ゆったりゆったりと歩を進めていく。
俺から見ると死神が近づいてくる様に見えてくる。
そして、銃を構え……
「ハヤメニカタズケタホウガイイデスネ」
引き金を……引いた。
タンッ
「……ふぇ?」
しかし、銃口は……
女の方を、向いていた。
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