初戦闘
(やるしかねぇ!!)
そう考えて俺はむくりと起き上がる。
起き上がる時、腹にズキリと痛みが走った。
(折れたか……)
おそらくアバラが1.2本イカれている。
だが、アバラだっただけ良かった。足とかだったら本当に終わっていただろう。
俺は痛みに耐えながら、むくりと起き上がり2人を見据える。
「む……」
「へぇ! まだ起きるんだぁ」
2人組で、男の方は身体強化系の様だ。女の方は……軍服に腰に銃だけなので断定できないか。
(不確定要素はあるが……!)
2人に向かって駆け出す。あの時の様な物を投げての目くらましは通用しないだろう。なので右腕に闘力を集中させ殴りかかる。
それに呼応するかのように男の方が向かってくる。体の筋肉が膨張して体が変質しないところを見るに筋肉が増えるタイプの増強の仕方ではない事がわかる。
男が右腕を構えて俺に合わせるように走ってくる。どうやら俺の挑発に乗ってくれたようだ。
そして……
拳同士が激突する。
「……ッ!」
腕に衝撃がかかる瞬間、確信する。
無理だ。闘力操作だけでは間違いなく勝てない。いくら闘力が増えたところで闘力は闘力、少し増えた程度で他のスキルに勝てるわけではない。
闘力操作だけならば。
「何ッ!?」
男の振りかぶった拳がバチンと弾き飛ばされる。
男はかなり驚いたのか、驚愕の声を上げていた。そして俺は残った左手で腰につけていた短剣を引き抜いて丸腰になった腹に突き刺そうとする。
「危ないよ!」
あともう数センチで刃先が届こうとしたその時、横から来た銃弾が短剣を破壊した。
破壊された短剣の1部が頬を切り裂き、血が滴り落ちる。
その間に男の方には後ろに下がられてしまった。
「もー! 死んだらどうするの!」
「すまない。少し油断していた。次から気をつけよう」
俺は頬の血を拭き取りながら考える。
男の方は何と言う事は無い。筋肉増強の方向ではないのが珍しいだけで何の変哲もない身体強化のスキルだ。
だが、女の方がわからない。銃を持っていることから銃に関係したスキルである可能性が高いがまだわからない。
(というか、そこまでの距離では無いにしろ銃でピンポイントに俺の得物を破壊してくるとは……銃を正確に当てられるみたいなスキルか?)
何にしろ接近しなくては戦闘にならない。
俺は意を決して2人のほうに向かって駆け出す。もちろん反射を使いながら。
「くるぞ」
「まかせて!」
女の方が俺に向かって銃口を向けてそのまま遠慮なく発砲してくる。
(人に向かって撃ってはいけませんと教育されんかったのか!!)
そんな事を思いながらそのまま真正面に銃弾が向かってくる。腕を十字にクロスさせタックルのような体制で迎え撃つ。
案の定、反射で銃弾が跳ね返る。想定の範疇。俺はそのままの体制で足に反射を使い、闘力操作で体を強化し一気に近づく。
「はっ!?」
男は素頓狂な声を上げ瞬時に目の前に近づいた俺を見て絶句する。ここまで早いと思っていなかったようだ。
まるでチーターかと思うような鋭い動きで近づいて右腕を振り上げる。
いくら相手が兵士だからといって受け身も取れないような状況で闘力操作で強化した拳を受ければただでは済まないだろう。
その拳が直撃しようとしたその時。
ドスン!
「ガッ……!」
左足に強い激痛が走る。軸足をずらされた俺はせっかくのチャンスを空振りで終えてしまった。
(一体なんだ!? 何にやられた!?)
痛みが走った左足の方を見る。左足には人差し指位の穴が空き、血が吹き出していた。
(穴の形から見るに……銃弾か!?)
この場所でこの殺傷力を誇るのは銃以外にありえない。
だが、そもそもわからないポイントがある。女の方から銃弾を放つ時の発砲音がまるで聞こえなかった事だ。
つまり、俺を打ち抜いた銃弾は俺が弾いた1発目の銃弾と言うことになる。
(あの時弾いたはずだ……)
わからないが長考している場合ではない。男の方が蹴りを繰り出してくる。反射を使い蹴りの攻撃を弾き返す。
右足を弾き飛ばされたことにより、明らかにのけぞる男。それを見逃すはずもなく、胸ぐらを掴んで引っ張り、頭に触れようとする。
「やらせない!」
女の方が銃弾を撃ってくる。銃弾程度なら反射する事は容易。分かり切った事だったが、やはり俺の腕に向かってくる銃弾は反射で簡単に弾き返された。
(ここだ!! ここが重要なんだ!)
俺は弾いた銃弾を見る。壁に突き刺さった銃弾を……
すると……
(……!!)
銃弾が1人でに動いて、こちらに向かってくるのを発見した。
これで確信した。女のスキルは撃った銃弾がホーミングして必ず当たるのだ。
これは相性が悪い。はじいてもはじいても弾が再び飛んでくるのだから……
(……だが)
タネがわかればどうと言う事はない。向かってくる銃弾をもう一度、今度は強く拒絶して弾く。
反射で吹っ飛んだ銃弾が戻ってくる前に、既に目と鼻の先にあった男の頭に触れた。
「じゃあな」
ボン! と音を立てて反射の力によって放たれた衝撃により男は一瞬で意識を落とした。
「ちょっ、アンタ何やってんの!?」
女の方はまさか俺が勝つと思っていなかった様だ。
それもそうだ。そもそも相手は俺に後天性スキルが宿った事を知らない。反射で戦った奴らは軒並み殺しているからだ。
(……何かしらあるとは考えるだろうがな)
俺は女の方を振り向く。女は視線に気が付き俺に銃口を向ける。
(撃ってこない……)
おそらく何か条件があるのだろう。
そしてこの状況から察するに……
(撃った弾が当たるまで撃てないとかかな……)
だが……
「当たる前に決めさせてもらうッ!!!!」
俺は反射プラス闘力操作で、クラウチングスタートのように踏み込み片足で地面を反射し女の方へ向かう。
左足を撃ち抜かれたため、両足では歩く程度しかできないがクラウチングスタートの要領で踏み込むことによってミサイルのように地面に足をつけることなく本当に地面スレスレを飛んでいく。
俺の凄まじい速度に銃弾すらついてこれない。
時間にして1秒もなく俺は女の目の前まで近づく。
「ヒイッ……!」
女が情けない声を上げるが、そんなことを気にしている余裕はない。早く、一刻も早くハカセの下に行かなければならない。
「悪いな」
ミサイルのような加速によりパワーアップしさらに闘力操作も乗った拳。そのまま殴れば間違いなく人の骨を粉砕するだろう。
それを女の顔にぶつけようとしたその時。
「お願い! 手を貸して!」
体が急に。
石になったように動かなくなった。
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