第2話:第二王子様は、赤いハイヒールを捨てた令嬢が好き



「今日、私は婚約破棄されるのですね」


 シンプルな若草色のドレス、黄色味が強い金髪をおだんごにし、特徴の無い顔立ち、高等部3年としては平均的な胸、地味と言われる私の今日の容姿です。


 夜会の翌日、第一王子からの通達で登城すると、王宮のホールには、たくさんの令嬢が集まっています。

 壁際では、自分の婚約者を心配する令息たちが、ため息を吐いています。


「第二王子様もいますね」

 彼とは高等部の同級生で、首席を私と争っている油断できない、、、幼馴染です。


 ◇


 第一王子が壇上に立ちます。中身を見なければ、イケメンです。

「よく集まってくれた、美しい令嬢たち」


「私は、ダイヤナーナ伯爵令嬢との婚約の破棄を、ここに宣言する」

 よく響く声で、第一王子が宣言しました。


 ホール全体が静寂に包まれました。皆さんの視線が、私に向けられます。


「なぜですの?」

 知らないふりをし、演技で理由をききます。


「君は地味だ! 私は、夜会で、素晴らしい令嬢と真実の恋に落ちた」

「それは、どちらの令嬢でしょう?」


「彼女は、名乗らなかったが、手がかりはある。彼女が残したこの赤いハイヒールだ」

「本日、これを履けた女性を、新しい婚約者とする」

 第一王子が宣言しました。


 ホールが、どよめきであふれました。

 視線は、第一王子が手にする赤いハイヒールに向けられます。


 もう、私のことなど誰も気にしません。


 ◇


 令嬢が一列に並び、第一王子が赤いハイヒールを履かせます。これは茶番です。


「なんだ? 赤いハイヒールを履ける令嬢ばかりじゃないか!」

 第一王子が声を荒げます。


 当然です、令嬢は足が大きくならないよう、皆さん規定の木靴で矯正しています。


 令嬢たちが、ヒソヒソと話し合っています。

「第一王子は、令嬢の足が好きなだけでは?」

「やだ、変態じゃん!」


 私は壁際に移動して、扇で口元を隠し、ほくそ笑みます。

「これで、王族側の責による婚約破棄が決定です」


 気の利くメイドさんが、冷たいグラスを渡してくれました。

 手にとって、一息入れます。


「終わってみると、なんだか虚しいものですね」

 目頭が熱くなってきましたが、王妃たる者、絶対に泣いてはいけません。


「あ、もう王妃になることは無いんだ、、、」



 あれ? 第二王子が私の方に来ます。

 もしかして、計画がバレてる?



「婚約破棄で傷心のところとは思いますが、よろしいですか」

「大丈夫ですよ」



 第二王子が、私の手をとり、唇を近づけました。



「ダイヤナーナ嬢、この私と結婚して下さい。貴女が、努力している姿を見て、お慕いしておりました」

 学園一のイケメンが告白? これは計画外です!


「い、いけません、貴方は、義弟になるお方です」

「もう、兄との婚約は無くなりました」


「じ、地味なんです私!」

「清楚な令嬢だと、ずっと想っていました」


「わ、私は、貴方に負けないように、ずっと頑張ってきました」

「知っていました、私も負けないように頑張ってきました」


「で、でも、婚約破棄された私は、国王陛下に会わせる顔がありません」

 混乱して何を言って良いのかわかりません。


 ◇


「大丈夫よ、貴女なら」

 さっきのメイドさん? なぜ?


「そのチョーカーは!」

 私は、とっさにカーテシーの姿勢を取ります。


「楽にして」

「はい、王妃様」


「え? 母上?」


「ダイヤナーナ嬢、第二王子への、貴女の本当の気持ちを聞かせなさい」

「はい、私は、第二王子様の頑張りを尊敬しています、そして、、、」


 感情が激しく動き、うまく言葉に出ません、、、


「そして?」

「そして、義弟以上の感情を、、、、幼馴染の時から、好きなんです、大好きだったんです」


 ついに、こらえていたものが、、、

 王妃様が涙を拭いて下さいます。



「わかりました。二人とも、付いていらっしゃい」


 ホールを出て、王妃様は変装を解きました。

 第二王子は、私の横に立って、腕を組んで歩いてくれます。


「この先は!」

 第二王子からエスコートされ、国王の間に通じる階段を、二人で登ります。

 


 ━━ fin ━━



あとがき

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妖艶な令嬢に魅了された? その令嬢は変装した私ですよ! 甘い秋空 @Amai-Akisora

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