第24話 《付与》
ウォウが右手の大剣を振りかぶる。
左手の大盾と鎧で相手の攻撃を凌ぎながら近づき、右手の大剣で叩き斬る。大雑把だが、耐久力と攻撃力に優れたウォウが行えば、強力だ。自分の強みを活かした戦い方。
だが、俺もただでやれては示しがつかない。
俺は剣でウォウの大剣による振り下ろしを真っ向から受ける。このまま受け続ければ、俺の数打ちの鉄剣はいとも簡単にポッキリと折れてしまうだろう。
だから、俺はウォウの力に合わせて、力を逃がすようにゆっくりと剣を傾ける。
ウォウが剛剣ならば俺は柔剣。これは、単純に真っ向から俺も剛剣で迎え撃っても、ウォウには勝てないからだ。体格や、そこからくる筋肉量が違う。
俺からそれた攻撃をウォウはウォウはあっさりと諦めた。ここから連撃を加えることもできたはずだが、ウォウは話がしたかったのかもしれない。
「剣の腕は鈍ってないようだな?」
ウォウは挑発的に言う。だから、俺も挑発的に返す。それを望まれていると思うから。
「魔法の腕も鈍ってなかっただろ?」
ウォウはニヤリと笑う。心から俺との戦いを、対話を楽しんでいる様だった。
「だがどうする。お前の剣も、魔法も。俺には効かない。お前にできるのは、俺の剣を受け流し続けることだけだ」
「そうだな。じゃあこういうのはどうだ?」
俺は魔法を発動させる。ウォウも真っ向から防ぎ切る構えだ。
「《雷撃》」
俺のかざした左手に魔法陣が浮かび、雷がウォウに向けて放たれる。
ウォウも流石に驚いていたが、今からウォウの重装備で避けるのは難しい。
「がああああああ!?」
《雷撃》の魔法は金属鎧では防げない。それは、アダマンタイトも例外ではない。
「なるほど。俺対策か……だが、連発はできないはずだ」
「そうだな。だから、こうする。《付与・雷》」
俺は自身の剣に向かって魔法を発動する。すると、雷が剣に宿る。
「久しぶりに見たぜ。昔から得意だったもんな、おまえ」
魔力量の少ない俺が、継戦能力を伸ばす方法。俺の弱点を補う対策が、この《付与》の魔法だ。
とはいえ、勇者だった頃は禄に出番がなかった。というのも聖剣には既に《聖力》という魔力とは別の魔物に特効のある力が備わっており、魔法を《付与》することはできなかったのだ。
そのうえ、《付与》魔法を覚えようというものは少ない。それこそ《付与術師(エンチャンター)》という魔術師とは別の職業として数えられることもあるくらいだ。
というのも、《付与》魔法は魔道具をまだ人族が作れなかった頃、一時的に魔法の力を物に与えるために開発された魔法なのだ。永続的に魔法の力を使える魔道具が、高額とはいえ普及した現在では、コスパ的にそちらに軍配が上がるだろう。
だが、メリットもある。例えば、〝敵の相性によって《付与》する魔法を変えられる点〟などだ。
「さて、まだやるか? ウォウ」
「当然。まだ俺にも勝ち目があるからな。俺がぶっ倒れるまで、付き合ってもらうぜ!!」
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