第4話勇者の弟子
「どういうことですか?」
慌てふためいている俺とは反対に、アリア王女は澄ました顔でお茶を飲んでいた。
「簡単なことです。フーバー王国を滅ぼした魔物に復讐しつつ、フーバー王国を再興するには、勇者になるのが一番だと思いまして。それに、あなたは私に負い目がある。違いますか?」
それも込みで俺に提案する辺り、肝が据わっている。
「分かりました。ただし、私に師事したからといって、勇者になれるとは限りません」
「もちろん。心得ております」
勇者を決めるのは聖剣だ。死に物狂いで鍛えた戦士が選ばれず、今まで剣を握ったことすらなかった平民が勇者になることだってある。
「それと、弟子になる以上、私は貴方を目下と扱います。王女として扱わないのは勿論、敬語は使わないし、修行によっては暴力をふるうこともあるでしょう。それでも、耐えられますか?」
「もちろんです。どんなに厳しい修行でも、耐えて見せます」
だろうな。アリア王女……いや、アリアはその程度では屈しない。
「ではアリア。早速今日この時から修行に入るが、いいか?」
「はい、師匠。もちろんです」
「よし。では今日の分の薪を割れ」
俺はそう言ってアリアを外に連れ出し、斧を渡す。
「あの、師匠。一応、この訓練にどんな意味があるのか教えてもらえますか?」
それはそうだろう。勇者になる修行の最初が薪割りでは、ただ雑用を押し付けられているようにも感じる。
昔の師弟は何も教えず、見て覚えろ、盗めということもやっていたそうだが、俺はその修行をやる理由を説明された方が身が入ると思っている。
「アリア、まず、お前には体力がない。薪割りで腕力を鍛える。そして、薪割りのフォームは剣の上段からの振り下ろしに似ている。きっと真剣を握る時にも役に立つだろう」
「はい!」
アリアは納得したようだ。力強く斧で薪を割り始めた。
さて、俺はどうするか。いつもなら昼寝をしたり、買い物に出かけたり、ゲームをしたりするところだが、アリアを働かせておいて自分はダラダラ過ごすというのは少し後ろめたい。
少し考えたが、アリアの修行メニューを考えることにした。正直、弟子なんて取ったことがないから手探りだが、できる師匠はこういうことをすると聞いた。
俺は、考えうる限りの役に立ちそうな修行を書き、その中で必須な事を骨組みに、やった方が良い事を肉付けしていく。アリアの体力も考えなければならないが、あまり余裕があり過ぎても訓練にならない。
生かさず殺さず、ギリギリを見極めることが重要だ。
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