第5話全てが修行
薪を全て割り終え、アリアが家に入ってきたときにはヘロヘロに疲れ切っていた。
「アリア、飯を作れ」
「これも修行ですか?」
アリアは疑いの目を向ける。まあ、疲れ切ったところに飯を作れなんて言われたらイラっとするだろう。
「勇者パーティーは魔王城に到着するまで旅をすることになる。つまり、野宿も当たり前にあるということだ。自分で飯を作る機会も必ずある。飯は元気の源だ。美味い飯を食えたほうが、絶対に力も増す」
アリアは納得したようで、厨房に立つ。とはいえ、アリアは元王女だ。おそらく料理なんてしたことがないだろう。
案の定、作られたベーコンエッグは真っ黒だった。作っている過程を見なければベーコンエッグだと気付かなかっただろう。
「いいかアリア。旅では食料は貴重だ。最悪、毒を持っている食材を食べなきゃいけなくなるかもしれない。その時のために、不味くても食え」
「最初から不味いと決め付けるのはやめてもらっていいですか、師匠」
と言ってもな~。これはどう見ても失敗だろう。でもまあ、確かに旅の中では一見ゲテモノだけど実は美味いって食材もあったし、とりあえず食べてみる。
やっぱり不味い。焼き過ぎでザリザリしている。
「失敗だ。お前も食え」
さっきの説明通り、アリアにも食わせる。
「いいか。食事の時間は気を抜きやすい。毒物への耐性を付けてもらうのはもちろん、奇襲にも気を付けろ」
早く食べ終わってしまうというのも手ではある。が、食事の時間は旅において数少ない癒しだ。それに、食事の間に仲間とのコミュニケーションや作戦会議をすることもある。
仲間の誰か一人が見張りをして食べるという手もあるが、それでは全員での会話や作戦会議はできない。そのせいで仲が悪くなって解散したパーティーもある程だ。
「不味いです」
自分の作ったベーコンエッグを食べたアリアが顔を顰める。
「自分が作った料理が不味いと分かったら、次は美味く作ろうと心の底から思えるだろ?」
「はい……」
アリアは落ち込みながら食器を片付け始めた。
「では、私は身体を拭いてきます」
「ああ。だが忘れるな。旅で水は貴重だ。身体を拭けない時もある」
「はい」
流石に薪割りをさせた後で女性に身体を拭かせないというのはどうかと思うので、それくらいは大目に見よう。
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