謎の男

「バン!」、突然会議室のドアが勢いよく開き若い男性職員が外から駆け込んできた、「解析した結果が出ました!」男は会議室の前に座る牧田に聞こえるようにその場で叫び、そして手に持った紙を掲げながら本部へと走っていった、沢田達は一度映像を提出すると解析結果がわかるまで、暫くの間会議室の椅子に座りながら時間を過ごしていた、突然のその報告に沢田はすぐさま本部へと向かった、男性職員が本部のテーブルに結果の書かれた紙を置くと、牧田や上山は透かさず容疑者の顔をが載った写真を見た、「この男が例の爆破事件の犯人か」 「その可能性は高いですね」牧田は腕を組ながらじっと男の顔を見つめた、すると回りにいる捜査員の間を掻き分けながら出てきた眞鍋がその場に入ってきた、「容疑者はどんな奴なんですか?」沢田は上層部の間から割り込み写真を見つめる牧田に話しかけた、「おい!沢田、今は会議中だぞ」横にいた上山は困惑した顔で沢田に言い詰めた、「自分達が見つけた証拠です、自分は一早く容疑者が誰なのか知りたいだけです」沢田は冷徹な視線で上山を見つめた、牧田は観念したかのように沢田に話した、「沢田、この人物が事件前夜にいた容疑者だ」そう言うと牧田は紙に載った写真を手に取り沢田に見せた、すぐに紙を受け取りじっとその顔を見ると、沢田の表情は段々と険しい顔へと変わってきた、沢田の異変に上山はすぐに気がついた、「何か知ってるのか?」 「いや」眞鍋はすぐに否定したが上山は何か隠していると信じなかった、「他に容疑者の情報は?」牧田は紙を持ち出した男性職員に問いかけた、するとその職員はメモを記した手帳を胸ポケットから取り出した、「容疑者の苗字は一岡、年齢は40代前半、名前は未だ判明していません。事件の2日前まで一岡は部品工場で4年間働いていました。名前は当時の仕事仲間から聞き出しました、それともう一つ今回使われた爆弾の所在がわかりました。爆弾の様式は硝酸アンモニウムを含んだ小型のクラスター爆弾だとわかりました。」

「わかった」牧田は報告を聴き終わるとすぐさま現場の捜査員に指示をかけた、「岡本、山地は爆弾を入手した経路を、都心の薬局、インターネット等を調べてくれ。」そう言うと二人は威勢よく返事を返し会議室から飛び出していった、すると牧田は眞鍋の方へと顔を向けた、「そして眞鍋、巻町、君らは当時の一岡の関係性を持つ人物に手当たり次第当たってくれ。」眞鍋は真っ直ぐな視線を牧田に見せ応えた、「はい!、」。眞鍋は後ろを振り返り小走りで巻町のいる席へと向かった、「指示が出た、行くぞ」椅子に座り資料を漁っていた巻町は突然後ろから眞鍋に話しかけられ思わず驚いてしまった、「びっくりした~!、す、すぐに行きます」そして巻町は慌てて立ち上がり眞鍋と共に会議室から抜け出していった。





10時45分スタジオ内では、依然として木村は武器を持ちながらテロは続いている、しかし木村は冷静には慣れなかった、「おい!カメラは消してないよな!どうなんだー!」木村は突然叫びだし裏スタジオに向け銃を突きつけた、坂口達はただ怯えるだけだった、「大丈夫です、しっかりとカメラは回っています」新堂は冷静に木村に話しかけた、だが木村はスタジオの席に座り込む新堂の方を睨み付けた、「いや、信用出来ないカメラをつけ直せ」今度は新堂に向け銃を突きつけた、「でしたら!携帯で確めてみましょう」そう言うと新堂はスタジオの入り口付近にいるマネージャーに携帯を持ってきて貰うようその場で伝えた、木村は未だ銃を新堂に向けたままだ、しばらくして変わりにADがスタジオに入り込み持ってきた携帯を慎重に新堂に渡した、木村の目付きは何を仕出かすかわからない様に現場にいるもの達は感じていた、「見てください、今携帯ではLIVEでスタジオは流れています、だから武器を下ろしてください、そしてまずは話し合いましょ。」新堂は木村に寄り添う様に迫ってきた、木村はしばらく悩み込んだがその数秒後にはようやく銃をおろした、「そう言えばお名前を聞いていませんでした」 「あんたに言う必要はない」新堂は何とかテロリストに寄り添うとするのを横に座る安森は険しい表情で新堂を見つめ只顔を横に振っている、「新堂さんこれ以上犯人を刺激しないでください!」小声で安森は新堂に訴えた、「でもこのままじゃ、何も打開策は見つからない、やるしかないんだジャーナリズムの本質を見つけるしかない!」すると新堂は突然立ち上がった、安森はその行動に恐怖や怒りが滲み出た顔で新堂を見つめた、「何してる、さっさと座れぇぇ!」木村は大声で新堂にぶつけた、「少しだけ私に時間をくれませんか?」木村は困惑した、「単なる時間稼ぎなだけだろ」 「いいんですか?このまま目的が叶う可能性は充分に低い、どこかで作戦を練り直さないと」木村は頭を抱え動揺している、「一体なにが言いたい!」 「今から私一人を人質にして、横にいる彼女は解放してくれませんか?」そう話すと木村は安森の方を振り向いた、「わかった、こいつは解放してやる、だがあんたはこのままだ」新堂は深く息を呑んだ。




その頃、桝田達はつきまとられていた記者から逃げきり、少女が住んでいると思われるマンションの前へと来ていた、少女がエントランスの方へと歩いていくと桝田は安心しながらその場に立ち止まった、「取り敢えず、これで解決したかな」そう思いながら少女の背中を眺めていると、こちらが立ち止まっていることに気がついた少女は、すぐに桝田の方を振り向き、薄く笑みを浮かべながら会釈した、桝田も笑顔を向けながら会釈を返し、マンションの中へと入っていく姿を見送った、「フー、最寄りの交番はどこだ~、」桝田はマンションの敷地から出ると、電池が残り僅かな携帯を取り出し、近くの交番を調べて事情を話そうと考えていた、「ここから15分か、」場所がわかると桝田はマップを開いた状態で足早に歩き出した、「コツコツ、コツコツ」細い住宅街を歩いていると、朝にも関わらず全身黒で覆われた帽子とコートを身につける男が反対側の道から足早に歩いてくる姿が目に映った、その男は下を俯きながら何か様子が可笑しい気配を桝田は感じ始めた、やがてその男は桝田のもとを通り過ぎると、少女が住むマンションの方へと曲がっていた、桝田はこのまま交番へと向かおうとする事に、何か心の中に不穏な気がして仕方がなくなってしまった、「まさかな、」桝田は意を決して、黒いコートの男の後を追った、足早に桝田はマンションの見える路地裏を曲がると、男が少女の住むマンションへと入る姿を目撃してしまった、その瞬間、桝田はマンションの方へと走り出した、エントランスに駆け込み、既に男が中へと侵入していないか辺りを確認していると、「何してるんですか?」突如部屋へと繋がる防犯ドアが開き、例の少女がドアから現れた、「大、大丈夫か!、何か怪しい男がここから入ってこなかったか?」桝田は心配しながら少女の事を気にかけた、「あ、ありがとうございます。怪しい人は見てませんよ」  「ハー、ハー、あぁ~それならよかった、君がまた襲われるんじゃないかと、おじさん思ったよ」すると桝田は腰から地面に倒れこんだ、ふと少女の顔を見ると、その表情は何か不安な顔を浮かべていた、「あの、、家に戻ったら親がまだ帰ってきてないんです。」 少女はそう話すと桝田は立ち上がった、「警察に詳しく話しておきたい、何があったのか改めて聞いてもいいかな、」 「どうぞ、入ってください、」。





「貴方、名前は何です?」 一人スタジオの人質となった新堂は積極的に犯人に迫っていた、「木村だ」小さく呟くと新堂は思わず笑顔を見せた、「木村さん、よろしければスタジオの席に座ってはどうです、しばらく立ったままでしたし疲れているでしょう?」木村は積極的に近づいてくる新堂に僅かに危険を感じていた、「確かあんた新堂だったよな、お前と話し合って何になる」木村は銃を持ちながら時々頭を抱えだしている、「今この番組は国民の皆様に届ける場でもあります、木村さん、何か力になることがあれば私は協力します、」すると新堂はスタジオを映す1カメラの方に目線を向けた、「今番組をご覧の皆さんどうか彼の力になってください、これは私からの大きなお願いです!」新堂はこれまでに見せなかった強い目線で視聴者に訴えた、「違う、違う、違う違う違う違う!、違う!」突然木村が叫んだ、新堂は木村の発言に何が違うのかと問いかけた、「新堂さん、ここに来たとき言いましたよね、昨日の爆破事件は未だ終わってないこれから何が起こるのか、」 「えぇ、確かに話していました、一体貴方の目的は何なんですか?」 「俺は爆破事件の犯人を知ってる、次に爆発が起こる場所も知ってる」その言葉に思わず新堂は言葉が出なかった、「俺は国民に問いかけに来た、東京から逃げろ、生き残りたければ逃げるんだ、」 「木、木村さんこれは本当何ですか?」 「次の爆発が起きるまえに、俺は伝えに来た」木村の目付きは新堂にはどうも嘘だと思えなかった、「どこに爆発が起きるんですか?」。





11時、テレビ局駐車場には警視庁から集められた特殊部隊SATが集められた、「これからテロリスト制圧作戦を行う、これは訓練ではない、失敗は許されない、だがこれまで培ってきた成果を見せるときだ!」SATリーダーの真壁はその強面の顔を見せながら整列する隊員達に力強い鼓舞を心に叩きつけた、「はい!」隊員達は作戦の準備に取りかかろうとしていた。

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