第6話

 どうしたって、死にたいと思うことはあるし、生きたいと想うこともある。


 けれども、私にとって生きるという事は、そう簡単に成しげられる行動ではないのだ。


 生きるには食が必要だし、娯楽も必要。夢も必要で、愛も必要。


 社会に溶け込む事も、誰かを気遣きづかう事も、偽りの自分を持つ事も、自我のない自分を持つ事も、何に対しても疑問を持たない自分を持つ事も。


 誰かを愛さなければいけない自分を持つ事も、誰かに愛されたい自分を持つ事も。


 善意を貫きたい自分を持つ事も、悪意を許してあげたい自分を持つ事も、善意を貫けないくせに悪意を否定する矛盾をはらんだ自分を持つ事も、全てが生きる事に必要。


 だから私は俯瞰ふかんする。


 だから私は世界をつくる。


 だから私は遠くを見やる。


 だから私は人をる。


 だから私は己を産む。


 だから私は今を恨み、今を愛する。


 だから私は世界を見ずに、神秘を見る。


 だから、私は、生きる事を諦める。



 死にながらこの世の社会を歩む私よ、己だけの愛で、想像の先へ行こう。



 そこには愛する自分が待っている。



 ぶかぷかと 浮かぶ私の 感性を


 死なせはしない 喜々ききなるせい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る