第5話

 ねぇあなた、蝶々ちょうちょう見目麗みめうるわしい羽が、綺羅きらびやかにおどっているわ。


 そう、あの絢爛けんらんなる花の上で。


 でもなんだか勿体ないわ。どうせ飛ぶんなら、桜の近くでその羽をパタパタしてくれればいいのに。


 そっちのほうが、絶対に、キレイな景色が見れるのに。


 私はふてくされる。同時に理解もした。


 生命の輪廻りんねは、この華やかな世界でも行われている。えぇ、はかなさを体現し眼前がんぜんの、イデアなる勝景しょうけいでも。


 美しい物にはとげがある。


 生きるのはとても残酷ざんこくな事。


 この世界はもしかしたら、ただの生き地獄かもしれないわ。


 だから……だからこそ。


 生きて、生きて、その先を見たい。


 勝景の彼方かなたを。はるか向こうの雄大なるその未来を。


 だってだって、この世界って……。


 私が幸せになる為に出来た、残酷で美しい世界なんだから。


 それじゃあ、もう行かないと。



 来年も春が見られるように、大事に大事にしていかないとね。



 春うらら 裏に思いし かなしみを


 溶かしてくれる  愛の美景びけい

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