第4話

 俄雨にわかあめに心を奪われるその時、私の虹彩色こうさいしょくは暖かな虹色にじいろに変わるのです。


 何故なのでしょう、空から降ってくるあの水の粒達に思いを巡らすなんて、これっぽっちも無かったのに。


 それも、ほんの一瞬の狂騒きょうそうのような物なのに。


 おや、狂って騒ぐのでは雨に失礼やもしれませぬね。


 ここはいっそ、狂騒を抑える為の響奏きょうそうが空からきらめいてきた、とでも言うべきなのでしょうか。


 ふふ。私は何を言っているのですかね、それこそ本当に狂騒をしているのではないでしょうか。


 ですが、まだ静かに狂っています。だとするとこれは狂騒ではなく狂黙きょうもく、に当たるはずですとも、きっと。


 さて、軽いお遊びはここまでに致しませぬと。そう、雨に心を奪われ、その瞳を七色に染め上げてしまった理由の所へと私は急ぐのです。


 

 まだ、私は。……まだ私は、夢がいざない、亜麻色あまいろよりも甘くとろける雨音の元を、見ていないのだから。



 その雲に せる思いよ 望郷ぼうきょう


 幼き日々の  愛しき雲だ

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