第3話

 散り散りになり、憎悪ぞうお阿鼻叫喚あびきょうかんとが入り混じった、恐ろしさ以外の何者でもない表情をしている自分がそこにあった。


 四方八方から、それは見ている。


 孤軍奮闘こぐんふんとう、いいや、これは四面楚歌しめんそかではないだろうか。


 痛い、苦しい、辛い。


 見ないでくれ、見ないでくれ。


 どうか私を許しておくれ、愛などいらない、暮らしもいらない、だから、だから……。


 散り散りになった私の欠片達は、私に問い掛ける。


 許してやろう、だから、己を愛するのだ。そこから人は始まるのだと。


 さすればきっと、これから終わりは来ないと。


 そうか、そうなのか、私は、人ではないのか。


 否定されてしまったのか。


 私は曲解きょっかいし、穿うがった見方をする。


 そしてここに、人ならざる物が誕生した。


 

 散り散りの私が見たのは、紛れもない散り散りの何かであった。



 ただそこに おのと対峙す くるしみよ


 勝てぬ快楽  人でなしなり

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