第2話

 愛は、地球上に降り注がれる温和おんわな水で出来た、神秘の泉なのです。


 この泉にかっていると、二律背反にりつはいはんしているような、なんとも言えない気持ちが心を悩ませます。


 それはまるで、絵画におぼれるように恍惚こうこつと。


 それはまるで、ガラスの破片のように剣呑けんのんと。


 それはまるで、孤独な霧中むちゅうにいるような胡乱こらんさと。


 あぁ、どうして愛に浸かってしまうと、これ程までに多様な感情が過大かだいふくれ上がり、水の中へと消え去ってしまうのか。


 私はどこへ行けば良いのでしょう、その奥地へと、進めばいいのでしょうか。


 悩みを消す為に、水中へといざ行かんとするべきでしょうか。


 ……まぁ、なんという事。少しばかり、ひらめきが目の前を横切ってくれました。


 ただ1人、この泉にいるから、愛が不確定なのです。


 さぁ、迎えにいかなければ。


 

 あなたを、この神秘の泉へと。



 いとおかし 鏡花水月きょうかすいげつ に負けじと


 ふたつの泉  とわにひとつへ

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