言葉の溜まり場 〜1投稿完結型〜

吾輩は藪の中

第1話

 私の名前を知っている人は居ますか? えぇ、そのような方はきっともう居ません。


 何故なのか、は、一時いっとき団欒だんらんを噛み締めてからに致しませんか?


 きっとそのほうが、素敵でいこいのある余暇よかをお過ごし出来るはずですから。


 ……閑話休題かんわきゅうだい


 

 春。暮れなずむ時間に想いをせるその時に、ただ芽吹く花の華やかさ。


 

 夏。生き物の鳴き声と大地の神秘、せいを感じる緑、その隣でひっそりと咲き乱れる花の豪華絢爛ごうかけんらんさ。



 秋。枯れ葉散る寒き日、それはただひたすらに舞い落ちるのみ。

 赤は緋色ひいろに、紅は唐紅からくれないに。可憐な花には一粒のしずくしたたりり落ちている。



 冬。暮れ泥んだその時を懐かしみ、ただ冷えびえとしたこの白銀世界はくぎんせかいで1人佇たたずみます。

 花はもう、あなたに見初みそめられる事は無かったと笑いながら、雫をたずさえた花びらに別離わかれを告げる。



 あゝ、悲しい話です。中々とても。


 憩いの場としては、少し場違いでありましたね、申し訳ございません。


 ですが、このお話には続きがあるのですよ。


 どういう物か? もう、あなたが1番それを分かっていらっしゃるのではありませんか。


 私の名前を誰も覚えていない理由、もう理解出来たのではありませぬのでしょうか?


 ふふ、分からないのであれば、いずれまた、このお話をしましょう。


 

 暮れ泥む 遠き冬から 目覚めたり


 出逢いし君と 1輪のすみれ

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